親の顔が見たい(ネタバレあり)
中野渡治江(校長):天明留理子 (青年団)
原田茂一(学年主任):近藤 強 (青年団)
今頃ようやく書いている😅
東京楽日を観て、それから配信を終了ぎりぎりの5/31にもう一度観た。
お芝居としてはとても良くて引き込まれるのだが、精神が脆弱な私などには話がエグすぎて再度観るには少し冷却期間が必要😓、という舞台。
昨年は直前で劇場公演は中止になってしまい配信のみになったのだが、それも観た(及び腰ながらDVDも購入。陽永さんがご出演なのでね😅)。
その時は、お芝居、役者さんの巧みさに引き込まれたものの、展開のエグさに感性が硬直してしまい、あまり色々考えられなかった。
でも、今年はキャストが変ったせいか、心構えが出来たせいか、もう少し色々なことを勝手に考えながら観ていた。
名門女子中学で、自殺した生徒の遺書に名前があった5人の生徒(イジメの加害者側)の親が集められて話し合う展開なのだが、自分の子供の無実を信じて守ろうとする親達、と書くと美しく思えなくもない。
だが、傍で観ているとヒトの無自覚な暗黒面全開。
いや、別に重苦しいだけの芝居ではない。親達の行動はその辺でもよく見かけるような何気ない日常会話のノリだし(チラチラとマウント合戦があるのも日常だろう)、思わず笑ってしまうような行動も度々出てくる。
役者さん皆様さすがで[やらないだろ、普通😅]というような行動もすんなり飲み込めてしまう。
でも、だからこそ怖くもなる。
本人も半信半疑、軽い気持ちで言い始めたことが他者の同意を得て勢いを増し、あたかも正論のようになって自らの正当性、権利を主張する。相手の小さな落ち度を論い、論点をすり替え、持論を押し通す。
形は違えど同じことが子供達の間でも起こっていたのだろうと想像してしまう。親を見ながら子供が透けて見える気がする。役者さん達が見事に自然に体現されるので、わかっていてもやはりゾッとした。
そして、昨年観た時はあまり引っ掛からなかった学校の先生達の言動が今年は何だか気になってしまった。
自殺した自分のクラスの生徒を自ら発見して壊れそうになっている戸田先生はともかく、校長も学年主任もあくまで誠実そうな雰囲気を醸し出しているが、一時は遺書を隠すことに同意し、状況が許せばイジメはなかったことにすらしかねない感じだった。
事件当日で一時的に混乱していただけかも知れないけれど、人々が声の大きい人の意見に引っ張られる様をまざまざと見せつけられた。
そして、先生達はその後も何処か他人事(自分は部外者である)という雰囲気を感じてしまった。この問題にもっとも適切な対応を職務として模索しているだけ・・・
と自分で書いていて、あれ?そりゃ、そうか、と急に思った。
先生は仕事だ。生徒を教育するというとても特異的で責任も重い職務だけれど仕事には違いないし、校長や学年主任となれば他の生徒達も学校自体も守らなければならないだろう。何処かドライさを保たなければ出来ないことかと、今、思った。
ここの所を考え出すと学校教育の範疇、教師の職務とは?などと舞台の感想の範疇を越えてしまうのでこの辺で😓
その点、新聞配達店の店長は単純に道子さんのことだけ考えることが出来る。彼のストレートな怒りや悲しみの発露はこのお芝居の中で一筋の光のような救いに感じた。いかにもヤンキーな外見と怒鳴り散らす様には迫力があったが、そのくせ、一通り主張し終わるときちんと挨拶して証拠の遺書も預けて去っていく。「親の顔が見たい。」は彼の言葉だ。
そもそも陽永さんがご出演なのもこのお芝居を観る動機の一つだったので、そういう役で嬉しかった。
もう一つ、各務さんがお元気そうにやや気弱そうなエリートさんを演じてらしたのも嬉しかった。それにしても、やはり最後に学年主任さんが長谷部夫妻に「翠さんは良い子です。」と仰る意図は何なのだろうと思う。
表面的には両親を慰めているのだろうと思うけど、単体でみれば "良い子" が集団になると同級生を自殺にまで追い込むことがあるという世の中の構図を示しているのか?
これは昨年観た時からなのだが、ラストの長谷部夫妻の言葉はちょっと「三人姉妹」の「生きていかなければ」が浮かんだ。
放心したような長谷部夫妻だったが、それでも「簡単に罪を認めてはいけない。」と今後の対策を練り出す。この先、生きていくために。
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