盟三五大切(ネタバレあり)
花組芝居創立35周年記念公演
第一弾 花組ヌーベル
下北沢小劇場B1
原作:四世鶴屋南北
脚本・演出:加納幸和
キャスト:
冨森助右衛門/古道具屋はしたの甚介/十二軒の内びん虎蔵/夜番太郎七:山下禎啓
家主くり回しの弥助実は民谷中間土手平/賤ヶ谷伴右衛門実はごろつき勘九郎:八代進一
徳右衛門同心了心/船頭お先の伊之助/役人出石宅兵衛:北沢洋
回し男幸八/判人長八実はごろつき五平/里親おくろ:磯村智彦
薩摩源五兵衛実は不破数右衛門:小林大介
船頭三五郎実は仙太郎:丸川敬之
芸者小万実は民谷召使いお六:永澤洋
若党六七八右衛門/芸者菊野:武市佳久
素敵だった!
流石、花組芝居!と思った。
歌舞伎でもこの演目は何度か観ている。
花組芝居では13年振りの再演。前回もその前のリーディングも観ている。
ストーリーだけ追うと結構とんでもない話で、悲惨だし、ちゃんと確認しなさいよ(-_-;)とちとイライラしたり、あれだけ残虐非道をしておいてそれでも数右衛門殿は仇討ちに参加出来るんだ😓と苦笑したり・・・(ま、そのために周りは命を捨てているのだから、行ってくれなきゃ余計切ないことになるんだけど)。
それでも観ていると引き込まれて面白いし、泣かされそうにもなる。つくづく歌舞伎とシェイクスピアって似てると思ってしまう話の一つ。
で、花組芝居版。
歌舞伎で通し上演をやったら何時間かかるんだ?(コクーン歌舞伎ではギュッと詰めてたけど)という舞台を、殺陣有り、お遊び有りのてんこ盛りなのに、2時間弱?できっちりまとめてしまう。今更驚きはしないけれど、やはり凄いと思う。
現代のお通夜風景、舞台の周りには観客からの供花が並び、黒のスーツをそれぞれにすっきりと着こなした役者さん達が挨拶し合うシーンから始まる。開演前は裏返してあった故人の写真は水下さんで、水下家のお通夜という体。
(ちなみに入口の受付の方々も喪服姿、グッズにはお香典返しが並んでた😅 黒仕様で来る観客も多かった。自分を含む 笑)
ビールで献杯、テレビでは5年前の「いろは四谷怪談」が流れ、スマホで呼び出されて出ていく人もいる。何故か電子レンジもある。
そして一旦全員がはけた後、一瞬のプロローグ、暗転して時代が飛ぶ。
セットも衣装もそのまま。鬘や若干の小道具はあるが、あとは役者さんの技量のみで世界が変わる。ものの見事に。
大体、その鬘だって、何じゃそりゃ?と首を傾げるような代物、月はヤカンだし、小万は狂言自殺で電子レンジに頭を突っ込むし、太郎七はランドセル背負ってるし、ラスト近く、源五兵衛が小万の首を前に飯を食う凄絶なシーンも、食す飯はレンチンしたパックご飯だ。
そこに歌舞伎の柝の音が響き(役者さんが打つ)、血飛沫を模した赤い投げテープが飛ぶ。
こう書き連ねると自分でも巫山戯ているようにしか読めない😓
が、違う。間違いなく「盟三五大切」通し上演。
愚かだなぁと呆れたり笑ったりしつつも、惹き寄せられ、泣かされる人々の世界。
それも小難しい訳ではなくて、かなり可笑しい。
役者さん皆様、性別、年齢、時代まで縦横無尽、軽やかにヘンテコなこともやってのけて可笑しいから余計切なくもなる。
スーツ姿、格好いい!と思いながら、武士にもごろつきにも芸者に思えるのは、なんとも豊かなことだなぁと改めて思う。
勿論、私は花組芝居の舞台をかなり観ていて加納さん演出に馴されてしまっている所もあるし😅、歌舞伎も観ていて話を知っているせいもあると思う。
もしかしたら知らないと何がなんだか?になったのかも知れない。だからなのか、今回は毎回前説に加納さんが出てらして、このお話の概要、四谷怪談、忠臣蔵との関係性、このお話が出来た裏事情などを解説して入り込み易くされていた。
役者さんは皆様、素敵だった。
源五兵衛の大介さんは前半がまあ、可愛い可愛い 笑 根がお坊ちゃんで純粋培養だったのか、君は?と苦笑するくらい小万さんにメロメロ😅 真面目な武市八右衛門の諫言も聞いちゃいないし。大介さん、最近ますます可愛らしい役もお似合い 笑
その分、血飛沫を模した赤い糸を纏わり付かせた惨殺シーンは凄まじかったし、小万の首を前に飯を食うシーンは凄惨だが切なかった。殺陣は格好良かった!
三五郎の丸川さん、いつの間にこんなに格好良くなったんだ?と思うくらい、すいっと若々しい色悪な雰囲気がとても素敵だった。永澤小万さんとイチャイチャする様もお似合いで 笑、何度か素っぽい話し方になる所と元に戻る切り替えもさり気なく自然で良いアクセントになっていた感じ。桂さんに泣かされ、水下さんに「トイレで泣け!」と言われたエピソードが本当か嘘かは不明だが、八代さんとの会話の流れも良くて ‘水下さん’ がすんなりお芝居に入ってきてた。
小万の永澤さん、キュートだった。お声も艶があって、婀娜っぽさというより小悪魔?と思うけれど少々清々しさが勝っているような雰囲気も丸川三五郎に合ってる感じで良かった。何度かもりもりご飯を食べていて、おお〜?と思ったあとで、そりゃ、若い男子なんだから当たり前だよなと可笑しかった。しかし32歳になるって、それこそ、おお〜?であった😅
旦那様に一所懸命に尽くしても報われない真面目な八右衛門さんな武市さんも良かった。まれに大介源五兵衛さんと仲良く話してるシーンは微笑ましかったし、丸川三五郎に体よくあしらわれる様も可愛かった😅 菊野さんも可愛かったが、菊を頭に付けて菊野ってそれはこの前の朝顔な永澤さんとおんなじじゃん、とチラッと思った 笑
ついでに小万に夢中な源五兵衛殿にため息をつくシーン等、シャンソマニアⅡのカーテンコールで「洋君ばかり見てないで、僕も見てください!」と大介さんに直訴していたヨサク君が重なった😅
大介さん、丸川さん、永澤さん、武市さんが4人揃っているシーン、おお、富姫様二人と図書様二人だ〜と思ったりした 笑
山下さんは、貫禄ある冨森殿から謎の小学生?太郎七殿まで、なんかもう・・・自由自在。「水やん」と言いながら添い寝するところはさらっと泣かされそうにもなるが、太郎七さんはもう奔放過ぎて酔っ払い姿とか思い出しても笑ってしまう 笑
北沢さんはちゃっかりした船頭さん、心許ないお役人😅、そして忠義者の三五郎父とニコニコしながらご活躍。初日は台詞が飛んでしまった小万さんのフォローを、ええぃ、とにかく、という感じで強引に進める勢いに見惚れた 笑
ベテラン勢に囲まれながら、小万さんに顎で使われる幸八さんとかおくろさんとか着実にこなす磯村さん、どこか困ったような愛嬌が素敵 笑
そして、花組芝居の舞台は5年振りな八代さん。舞台自体はあちこちで観てはいたけれど、花組芝居で拝見するとまた格別。しなやかさ、軽やかさ、バババ伴右衛門殿 笑 の強気と弱気が同居して見えるような雰囲気、マシンガンを撃つ姿に見惚れた 笑
開き直った土手平殿のワル振りも良かったが、その前の幽霊での困惑振りも楽しかった。初日は劇場に入って右側の席にしたら、八代さんのお役の数々がよく見えて、つい追ってしまい、土手平殿が亡くなっても色々お働きだったりすること等も楽しんでしまった😅
【あらすじ】
自分の落ち度で盗まれた金を戻すことで塩冶家の仇討ちに加わることが出来る不破数右衛門は残りの百両の工面に苦心していた。
若いうちに勘当され主の顔も知らない仙太郎も数右衛門のために金を集めていたが、彼は妻お六を芸者にして源五兵衛という浪人に貢がせていた。
そして源五兵衛が叔父から受け取った百両をまんまと騙して手に入れるが、怒りに燃えた源五兵衛が襲ってきて彼らの仲間を皆殺しにする。
危うく逃れた仙太郎とお六だが、引越し先で見つかってしまう。しかし、先の殺人の咎で役人が源五兵衛を捕らえにくる。が、源五兵衛小者の八右衛門が罪を被って捕らえられる。一旦は帰った源五兵衛だが、仙太郎が留守の時に再び現れ、お六を殺し、首を持ち帰る。
そこへ仙太郎の父が、仙太郎が偶然手に入れた師直家の図面を持ってやってくる。彼は先に仙太郎が入手した百両も届けていた。
源五兵衛は実は不破数右衛門。仙太郎はそれとは知らずに主のために主を騙していた。腹を切って姿を見せた仙太郎は、数右衛門の罪は自分が被ると告げる。
数右衛門は仇討ちへと向う。
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