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コーラないんですけど(ネタバレあり)

渡辺源四郎商店第36回公演

Presents うさぎ庵 vol.18

5月8日夜、5月10日昼観劇


作・演出:工藤千夏

キャスト:

母/ケイちゃん/他:桂憲一(花組芝居)

母/ケイちゃん/他:大井靖彦(花組芝居)

派遣会社社員?、店員、その他:植本純米(花組芝居)


これも劇場で観たあと、配信最後の5/31に再度観た舞台。

やはり昨年は劇場公演は直前で中止になってしまい、配信だけ観た(ほぼ四獣なので、勿論DVDも購入 笑)

その時はキャラメルボックスの西川さんが植本さんとダブルキャストで入ってらして、同じ戯曲なのにそれぞれでお芝居全体の雰囲気が少し異なり、特に桂さんケイちゃんの印象が違うという面白さもあった。

 が、今回は直前で西川さんが体調不良で降板されてしまい、本来の完全上演はちと先送り、その分まで3人が奮闘された公演、だな。


 桂さんと大井さんが、時を行きつ戻りつしながら、お母さんと息子のケイちゃんを瞬時にチェンジして演じるのだが(その他にも幾つか役有り)、衣装も変えずに(マフラーや上着などちょっと小道具があるくらい)、目の前で性別、年齢飛び越えてフッと役が切り替わる。

 植本さんは、派遣会社の社員やコンビニ店員、怪しげな神様、小学生ケイちゃんの同級生は今回はアスカ(エヴァ)仕様だっけ? 笑 もう何でも有り。それぞれに工夫を凝らして巧みで、一人で万能のバイプレーヤーズ状態である😅

 この方々なら当然と思いつつも、改めて惚れ惚れと見惚れてしまった。


 今回は結構演出が変わっていて、昨年とはかなり印象が違った。

 先に面白さと書いたが、単純に面白いお芝居ではない。可笑しく笑える部分も沢山あるが、全体としてはむしろ精神的にキツイお芝居で、配信とは言え「親の顔が見たい」とダブルで観た5/31はかなり疲弊した(自業自得😅)


 ただ、昨年観た時よりも今回の方が最終的な印象が柔らかい気がした。

 子供時代のケイちゃんに対するお母さんの言動が、身勝手ではあっても本当にケイちゃんを思ってのことと感じられたのが大きい気がする。

 この時のお母さんは桂さんが演じている。引きこもりのまま大人になったケイちゃんも桂さん。


 昨年版はお母さんがかなり自分本位に思えて、振り回される子供のケイちゃん:大井さんが気の毒だったので、大人なケイちゃんが相当な自己中になってお母さんが振り回されるのは、まあ、当然かとドライに思ってしまったりもした😓 (ただし、振り回されるお母さんはまた大井さん、そこはまた気の毒・・・)


 でも、2022年版は多分に妄想的ではあっても子供想いなお母さんに思えたので、大人で自己中なケイちゃんの行動には結構イライラしてしまった。

 

 それが半ば騙されて戦場に連れていかれ、言ってみればアムロとかシンジ君のように無理矢理戦争の最中で働かされて、結果として成長したように思えるのは良いのか悪いのか。


 戦争から戻ってきたケイちゃんが、年老いて呆けも始まっているようなお母さんをコンビニで見つけて一緒に自宅に戻ってきた後のシーン、ここも印象が変わった理由の一つ。

 昨年はお母さんは最後まで大井さんのままだったが、今年はラスト、桂さんにスイッチ。


 お母さんがずっと見続けている怖い夢はケイちゃんの現実と重なる。夢を語るお母さんも、戦争を生きるケイちゃんも今回は桂さんだ。

 お母さんとケイちゃんは入れ替わりながら人生を繰り返しループしているのかも、なんてことも思った。


 そして、お母さんをギューっと抱きしめてあげるケイちゃんは昔も今も大井さん。泣かされそうになった。


 大井さん、子供のケイちゃんの可愛らしさは勿論、青年なケイちゃんもスッとしてカッコいい。ケイちゃんを何とか一人でも生きていけるようにしようと腐心するお母さんも老いておっとりしたお母さんも良かった。お母さんにとって、途中から、コーラはケイちゃんを救う魔法のアイテムみたいになってたのかなと思ったりした。

 それが軍に入れば入手し放題というのも象徴的だ。

 派遣会社のマスコットは言わずもがなの可愛らしさで説明も巧み。引き籠もりの男子を釣るにはもってこいのキャラよなぁ😅


 桂さん、基本立役なのに女性役もすごく引き寄せられる。息子に妄想のような夢を押し付けるちとイタい母親なのに可愛らしくどこか憎めない。そしてそのままチェンジする大人になったケイちゃんは、もう全身から自己中なダメダメ振りが醸し出されて呆れるやら感心するやら😅 対して、戦争から戻ってきた時のケイちゃんはそれこそ凛々しくカッコいい。見惚れてしまった。

 それから、コーラを探す旅に出たお母さんが出会う明るく真っ直ぐな配達員さんはパラレルワールドのケイちゃんなのかな。思いっきりわざとらしいウィンクも素敵だった 笑


【あらすじ】

(でもこのお芝居はあらすじ書いても仕方ない気もする😅)

 一人息子ケイに音楽の神に愛されているとヴァイオリンを押し付けてきた母親は毎日のように恐ろしい夢を見ていた。どこまでも歩き続け、やがて人を殺して覚める夢。

 ある日、小学5年から大人になっても引き籠りを続ける息子が半ば嫌味で請うたコーラを探しに出かけるが見つからない。

 その間にケイは母親が親戚から紹介してもらった会社にネットでアクセスし、そのまま就職を決めてしまう。それは民間ながら戦場に人員を派遣する会社だった。

 避けようもなく戦場に送られたケイが体験する世界はかつて母親が見ていた夢そのもの。 

 ケイが戻ってきた時、母は老いて呆けも始まっていたが息子のためにコーラを買いにきていた。

 怖い夢を見ると言う母親をケイは子供の頃のように抱き締める。

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