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見てないで降りてこいよ(ネタバレあり)

ぽこぽこクラブ 早春公演

オメガ東京


3月10日16時、3月14日16時 他😅 観劇


作・演出:三上陽永


キャスト:

ナオキ:山岸賢介(ウラニーノ)

ケンジ:三上陽永(ぽこぽこクラブ)

アカリ:都倉有加(シープラス)


男1、不良、生徒会長、医師等:渡辺芳博(ぽこぽこクラブ)

男2、不良、歌の先生、ナオキの母 他:坂本健(ぽこぽこクラブ)



この公演の前に、劇小劇場で「若手演出家コンクール」の応募作品として上演され、最優秀賞!

おめでとうございます😄


コンクール(数は少なかったが観客も入れたし、配信もあった)の時からとても良かったけれど、オメガ東京でさらに変化、進化、あちこち挑戦し続けていた気もしたお芝居。


一言で言うと、すごく良かった!


拍手し続ける男2の気分、

と書けば、観た方には伝わるだろうか 笑


1時間の中でここまで濃密なお芝居もすごいなと思う。あっという間でもあるし、すごく長い時を過ごした気もした。


最初(コンクールの初日)に観た印象は、とにかく‘‘直球‘!

いろいろな意味で、バカが付くくらい(すみません😅)ど真ん中、全力投球勝負!に思えて、お芝居に引き込まれて鳩尾辺りが苦しくなるのと同時に、コンクールに挑んでいる陽永さん、ぽこぽこクラブの面々そのものにも泣かされそうになってしまった。


どうしても応援団的な気分になってしまい、審査員がチェックしそうなことを勝手に推測して観てしまった所もあるので、感想をまとめようと思うとどうも妙な目線の書き方になってしまう😅

一旦書いて、そのうち整理しよう。


まず、脚本がものすごく真っ直ぐ。

友情、優しさ、強さなどプラスな面だけでなく、嫉妬、自らの障害を受け入れることへの抵抗、八つ当たり等もとてもリアルに描かれる。その上で、それを指摘し正してくれる存在、それを受け入れる過程、さらに受け入れきれなかったのかも知れない部分などが、またとても素直に描かれていて、観ていて苦しくもなるが、最後は優しい温かな気持ちが残る。


そして、演出。(普段こんな感想は書かないと思う 笑)

これでもか!と次々と繰り出されるアナログとも言える直球な演劇的アイディアの数々。

観ていて、そこまで詰め込むか?と若干心配になったくらい😅

山岸さんの雰囲気とギター、歌の活かし方、リサイクルショップのあれこれが部屋の色々なモノになり、山になり、粗大ゴミ置き場になったりもする。ベッドは人形劇の舞台だし(大人しいナオちゃんが、ケンジに怒鳴られて雲まで?飛び上がってしまう所、密かにとても好きだった 笑)、スクリーンだし(これはオメガ東京のみ)。

石を投げるシーンやアカリちゃんのダイブシーンのクレッシェンド?は何度見てもつい吹き出してしまう。

いくつか出てくる相似な動作、シーンの重ね方もすごく効果的で上手いなぁと思った。

ナオキがいじめっ子達にからかわれるシーンと難聴の悪化に慄くケンジのシーン等、重なることで深みが増して見える。

なお、シライケイタさん作のお芝居での千葉哲也さん演出をどうしても使いたくてやったそうな 笑、冷蔵庫に頭を突っ込んで自分の情けなさを泣きながら告白するシーン、アカリちゃんの懐の深さも含めてとても良かった。



次、役者さん。

いや、役者さんの活かし方、演技も演出の1つになるのだろうけれども、それをしっかり豊かに体現する皆様、それぞれ本当に素敵だった。どのキャラも印象的、魅力的だった。


主演の一人、ナオキの山岸さん。

正直、初舞台の方をコンクール参加作品の主演に据えるってチャレンジャーだなぁ😅と思っていたけれど、びっくりするくらい自然に舞台に溶け込んでいた。

人前では固まってしまう緘黙症のナオキ、でもケンジと居る時は控え目ながら喜怒哀楽を見せ、歌い出すと見違えるように変わる。

山岸さんのジェントルな佇まい(アフタートークでは"上品"と表現されてた 笑)を活かしての当て書きだそうだけれど、それだけでないのは、楽日のカーテンコール、話の流れで突然、陽永さんが「やっぱり、お前の前で歌うのキツイよ!」と舞台の台詞を投げた際に、即座にしかもさり気なく受けて立って場を形成したのを見てわかった。恐れ入りました。

そして、ギターと歌の説得力が高いのは「もうひとつの地球の歩き方」で知ってから曲をスマホに入れてあるので既知である。ケンちゃんが愕然としたシーン(「愛してる」を歌ってる時)はホントに顔が違った 笑 

贅沢!


もうひとりの主演、ケンジの陽永さん。

もともと虚構の劇団の舞台から、見てはいけない内面まで吐露するような表情に引っ張られているのだけれど、今回のこれはもう・・・卑怯😅

引っ張られ過ぎてどうしようかと思った。

いじけてても元気な頃はただ追いかけていれば良かったけれど、耳のことが顕在化してきた頃はその表情を見てるのが辛すぎて、でも目は離せなくて、仕方ないので無理矢理演出に意識を飛ばして感心している、と言うような妙なことをしてしまった。

天使の輪っかみたいなのを付けてビョンビョンと振った後、天からナオキを促して笑顔を見せる所も素敵だが、照明が当たらなくなっていく中で、ナオキはもう大丈夫だなとでも言うように輪っかを無造作に外して脚立から降りる所もかなり好きだった。


そのケンちゃんの隣でしっかりと支え、励まし、叱ってもくれて、かつ可愛いと言う魅力的過ぎるアカリちゃんの都倉さん。

本当に素敵だった!

委員長タイプの中学生の頃、鈍いケンちゃんに見つめられて固まる表情と切り換え方、ダイブするお茶目さ。

ナオキを傷つけたことを悔やみつつ、一人歌詞ノートを読み出し、やがて歌い出すケンジに徐々に寄り添い、最後に抱き締めるシーン、泣かされた。

もっとも、このシーンは幾つかバージョンがあったようで、歌詞ノートを手にしたケンちゃんが淡く微笑みながらアカリちゃんを見て、すぐに二人寄り添って歌詞を読み出すバージョンも切なさと優しさがごっちゃになって良かった。個人的には先の意地っ張りケンちゃんバージョンの方がしっくりくるけど。

ケンジが亡くなってから訪れたナオキとのやり取りもとても良い。押し付けず引き過ぎず、絶妙。いやー、都倉さん、素敵だ〜。


もう一人、さり気ない気丈さがとても魅力的だったのがナオキのお母さん、サカモンさん。

本当は様々に悩み苦しんでもいたのだろうけれど、さり気なくナオキとケンジに接する様、一直線なケンジにあくまでも穏やかに笑顔で対する姿、激昂するケンジを見送った後の姿から滲み出て見える気がした想いに何とも言えない気分になった。

そして、サカモンさん、リサイクルショップの耳の聞こえない店員さんも素敵だった。裏表のない素直さが、ラストの奇跡を当然に見せてる気がする。

その他、不良、ラッパー、歌の先生、どれも生き生きして素敵だった。黒衣?もね 笑


で、リサイクルショップの謎の?店長、べーさん。

ぶっきらぼうで横暴な物言いをしていても店員君を可愛がっている気がするし、つい、何か隠されたものを持っていそうな気もしてしまう  笑 店長さんと店員君の関係性にも興味を引かれる。

典型的な不良、クソ真面目な生徒会長(彼の提案は好意的だったと思うけどなぁ😅)、隣のご婦人、ラッパー、医師など流石の切り換え方。楽しかった。

黒衣?の数々もお見事で、雲まで飛び上がるナオちゃんを動かしてたのもべーさん 笑

楽日の髪型で遊んでみたりするところも素敵 笑



この店長と店員君がいるリサイクルショップの色々なモノに纏わるお話をシリーズ化したら面白そう、なんてことも思ってしまった。



さて、最後にちらっと


温かい気持ちが残ると書いたけれど、捻くれている私は若干苦味も感じる。


音楽の道を進むナオキを天から見守るケンジ。

それは優しい世界。


でも、ケンジが去ってナオキが人と話せるようになったのは、ケンジが後で悔やんだキツイ言葉がきっかけかも知れない。ケンジがいたら甘えていた。いや、無意識にケンジに遠慮していたのかも?なんてことも思う。


ケンジは、結局、自分の障害をきちんと受け入れる前に事故で亡くなってしまった。

ケンジのナオキへの友情に嘘はないと思うけれど、そこに立場の逆転と言う発想はあったのだろうか?


なんてことが浮かぶくらい、物凄くリアルに自然に表現してくださってしまうので、常々自分の中の美しくない感情と戦っている私なんぞは勝手に苦味も感じるのであった😅



(あらすじ)

店長と耳の聞こえない店員がわちゃわちゃと?働くリサイクルショップを訪れた青年が、店員のギターを借りて歌い出す。


緘黙症のナオキは、中学時代、幼馴染のケンジから貰ったギターを軽々と弾きこなすようになる。ケンジは、もう一人の幼馴染アカリをマネージャーに引き入れ、ナオキと共にバンド:ニューノイズを結成する。

「ナオキの才能は神様からの贈り物だ。」と言うケンジに、ナオキは「僕にとっての神様はケンちゃんかな。」


ナオキの母親は、特殊学級に通うナオキに障害者手帳を取り、特別支援学校に行かせようと考えていることをケンジに伝えるが、ケンジは「ナオキを障害者扱いするな!」と叫んで飛び出してしまう。

明け方、ナオキを誘い出して朝日を見に行ったケンジ

「俺は神様じゃない。俺達は相棒だ。」


ナオキと一緒に通学するため定時制高校を選び、夜はクラブでバイトしながら、高校卒業後もバンド活動を続けていたケンジは、ある日、ギターだけでなく、歌も作曲も自分よりはるかに上であるナオキの姿を見て落ち込むが、自分の彼女になっているアカリに叱咤され、またナオキの元に戻る。


そんな中、ケンジは、以前から聞こえ難いことがあった耳がさらに聞こえなくなっていることに気づく。突発性難聴で右耳は殆ど聞こえず、左耳もかなり聴力が落ちており聴覚を失う恐れがある。障害者手帳を取得するようにと勧められる。


補聴器を選ぶアカリに当たり散らしたりしたケンジは、ナオキにニューノイズ解散を告げる。

驚いて理由を尋ねるナオキに

「お前の障害はその気になれば治る。俺と一緒にいるから甘えてる。俺は神様なんかじゃない。」


「何故、そんなひどいことを言ったの」

とアカリに問われたケンジは

「わからない。(自分の障害のことは)どうしても言えなかった。俺、最低だな。」


やがて歌詞を書き溜めたノートを手に取り、読み出すケンジ。


ナオキはギターを粗大ゴミ置き場に捨てようとして、引き返してギターを弾き出す。


二人で作った歌を二人が別々な場所で歌い出す。

ケンジにアカリが寄り添い、泣き崩れるケンジを抱き締める。


ナオキはギターを置いて立ち去る。



しばらく後、一対一なら話せるようになったナオキがアカリの元を訪れる。音楽はやっていない。

アカリはケンジの歌詞ノートと障害者手帳を見せる。

驚くナオキに、アカリは「これがニューノイズ解散の本当の理由。」


事故で亡くなったケンジ。

補聴器は着けていなかった。


アカリがケンジの言葉を伝える。

「もう一度ナオちゃんの歌が聞きたいって。神様になってナオキを見ててやるって。」


ナオキにケンジの声が聞こえる。

ケンジはナオキを促す。


「わかったよ。ケンちゃんが見ててくれるなら、僕、歌ってみるよ。」



見てないで降りてきてよ。

見てないで降りてこいよ。


青年が歌い終わると、店員が猛烈に拍手する。

「良かった!すごく良かった!」


店長は「わかんのかよ。」と呆れつつ、青年に名前を聞く。

「ニューノイズ。バンド名です。」


「ギター、拾ってくれてありがとう。」

とナオキが去った後、店員が歌い出す。


見てないで降りてきてよ。


「良い歌だったな。」と店長。


見てないで降りてこいよ。


ん?

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