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2020年1月

鶴かもしれない2020(ネタバレあり)

EPOCH MAN 

駅前劇場


1/10夜、1/13夕方?  観劇


作・演出・美術:小沢道成

音楽:岡田太郎(悪い芝居)


キャスト:小沢道成



小沢さんの一人芝居。

「鶴の恩返し」をベースにした現代劇で、再々演。


凄かった。

60分が、あっという間にも、60分しかなかったのか?とも思えた。


再演は観ていて、ラジカセ数台(3台かな)を使ってのやりとり等は前回同様なのだが、全体的な舞台としての印象がよりシャープに洗練され、独特の世界が部分的にはちと強烈過ぎるくらいに鮮やかに展開されて、なんだかひたすら圧倒された。


最初の方は、'美しい娘'を「三回言ったぞ? 笑」等のお茶目なやりとりや、どこまで行くんだ、それ?な料理のシーン等のような可笑しさや微笑ましさにかなり笑ってもいたが、話が進むにつれて見えてくる破綻の兆しにどんどん息苦しくなりながら固まって観ていた。


一人芝居なのに、相手の仕草や表情まで見える気がしてくるのはまだしも?、観た席の位置によってその相手の表情や仕草が少し違っているような気がして、また凄いなぁと思った。


鶴子さんの、その・・・「仕事」中のシーン、恐ろしく痛く切ないシーンなのだが、ものすごくキレイでもある。断続的な?照明の中で煌びやかに広がる衣装が、何故か純白の羽のように思えてギョッとしながら見とれた。

ラスト近くの羽を引き抜きながらの凄みのある機織りのシーンと繋がる。


前回観た時は、この先も似たようなことが繰り返されるであろう彼女の業のようなものを切なく感じたけれど、今回は、そんな彼女に手を差し伸べ、一旦は救う誰かがいる世界と言うものを司る何かの怖さ、みたいのものを何となく感じてしまった。


って、書いてて自分でも上手く説明出来てる気がしないけど😓



額縁つきの鏡を何枚も組み合わせような壁は、照明と音で夜の都会の街中にも、昔の雪野原にも見えた。さらに狭いアパートの一室、煌びやかで妖しげな店内、玄関や窓は当然ながら、引き出せば台所にもなったりと、セットの使い方もとても面白かった。

それから、衣装もとても凝っていて素敵だった。いつか展示会をまたやって欲しい。


あとは個人的な連想ゲーム 😅

最初に彼女がタニヤマさんを訪ねてくるシーン、安部公房さんの「友達」を思い出してしまい、正直、かなり引く。怖い・・・

何故にそんな簡単に受け入れてしまうんだ、タニヤマさん😓

そして、チェーホフの「かわいい女」

この小説の主人公オーレンカは愛する人(父、夫、子供など)の全てを自分のものとして受け入れる女性。愛する人無しには自分の意見も持てなくなる。

この小説の解釈は色々あって何が正しいという事ではないと思うけれど、私は「鶴かもしれない」を観るとこの小説が浮かぶ。観てから読み直してみたら、案の定、また違った読み方になったらしくて面白かった。


もう1つ、雪の中に一羽蹲る鶴のイメージから、最近観た「フランケンシュタイン」も浮かんだ。

こちらは復讐として北極に1人取り残されるのだが、元親友だった怪物の亡骸を抱えている。観ていて、こちらの気持ちの締め付けられ方が似てた。


最後、タニヤマさんが創った歌が「どん底」。

2019年、新国立劇場でやった「どん底」で花組芝居の谷山さんが男爵やってらして、内心、つい吹き出してました 笑



(あらすじ)

売れないミュージシャンの若者(タニヤマ)の部屋に美しい娘が突然訪ねてきて、泊めてくれと頼む。

娘は、以前、街中で泣いていた時に声をかけてくれた若者を見かけて、お礼がしたくて後をつけ、やってきたのだと言う。

嫁にしてくれとまで言う娘に、若者は戸惑いながらも、まずはお試しから、と一緒に暮らし始める。

娘は楽しそうに家事をし、二人は幸せに暮らしていたが、ある時、若者が路上パフォーマンスが盛んな米国に行ってみたいという夢を語る。

娘は一週間の仕事に出掛け、若者の服などたくさんの土産を持って戻る。

次に出掛けた時には米国行きのツアーのチケットを持って戻ってきた。

彼女の留守中に妙な男が訪ねてきたこともあり、さすがに不審に思った若者は、わざと欲しいものがあると告げて、娘が仕事に出掛けた後をつける。

娘は、鶴子と言う名前で、オーダーしてくれた客と外出し、交渉次第で何でもする店で働いていた。

若者は、理解出来ないと娘を責め、去った。

娘はここから抜けられない己を嘆く。

そこに「大丈夫ですか?」と声をかける1人の若者。

「大丈夫です。」

答えた娘はその若者の後ろ姿を見つめ続ける。

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義経千本桜(ネタバレあり)

花組芝居

2019/2020 あうるすぽっとタイアップ公演シリーズ

あうるすぽっと

12月13日公開ゲネプロ、13日夜、22日昼 他観劇


原作:竹田出雲 三好松洛 並木千柳

脚本・演出:加納幸和

キャスト:

銀平女房お柳実は内侍の局/すし屋娘お里(加納幸和)

左大臣藤原朝方/鮨屋弥左衛門 他(原川浩明)

川越太郎重頼/尼妙林/河連法眼 他(山下禎啓)

渡海屋銀平 実は 新中納言知盛/梶原平三景時/法橋坊 他(桂憲一)

卿の君/銀平娘お安 実は安徳天皇/鬼佐渡坊 他(大井靖彦)

逸見藤太/権太女房小せん/横川覚範実は能登守教経 他(北沢洋)

若葉の内侍/河連法眼の妻 飛鳥 他(横道毅)

六代君(嶋倉雷象)

武蔵坊弁慶/弥左衛門女房お米(秋葉陽司)

駿河次郎 他  (松原綾央)

亀井六郎 他  (磯村智彦)

相模五郎/いがみの権太 他(小林大介)

猪熊大之進/佐藤忠信実は源九郎狐/佐藤四郎兵衛忠信  (谷山知宏)

入江丹蔵/主馬小金吾/薬医坊 他(丸川敬之)

土佐坊正尊/弥助実は三位中将維盛 他(押田健史)

静御前/権太の息子 善太(永澤洋)

九郎判官源義経 他(武市佳久)



花組芝居の三大浄瑠璃 全段通し公演の最後。

「KANADEHON 忠臣蔵」は2007年、「菅原伝授手習鑑 ~天神さまの来た道~」は2012年、そして2019年に「義経千本桜」。

全段通したら普通は10時間はかかりそうな物語を休憩込みで3時間弱(2時間45分)で上演するこのシリーズ、全段が見事に納まっていることにもはや驚きはしないけれど(笑)、やはり感動する。しかも狐忠信のあれこれや碇知盛の能、鮨屋の文楽等への拘りよう、凄いと思う。

もっとも、私は歌舞伎その他で観たことがある「義経千本桜」は、狐忠信関連の所、渡海屋、すし屋辺りだけで全体の流れは知らなかったので橋本治さん/岡田嘉夫さんの絵本で予習して臨みました(^_^;)


冒頭は、壁半分を覆う桜と言えば桜だが見ようによっては血飛沫?が描かれた幕をバックに、壊れた能舞台のようなセット、泡が浮かんでは消えていくような音に取り巻かれて海の底に迷い込んだような気持ちになった所に雷鳴?、そして出てくる袴姿の虫?  蛍?  蟹??、と言うよりその昔のインベーダーゲーム?のようなお面と動きの物の怪?達がやがて踊りに変化して、それらが消えていくと共に現れる義経、弁慶、藤原朝方・・・


そこから先は、衣装と言い、台詞と言い、所作と言い、音楽、効果音も含めて基本的にはびっくりするくらいにまともに歌舞伎(文楽、能に近い部分も多かったと思うけれど、私はあまり知らないのでわからない)。

でも、そこにダンスだったり野球だったりラップだったり、絶妙に異質なものや可笑しみを交えて、言葉が全てわからなくても展開はわかり、各々のシーンで誰かに感情移入してしまうような入り込み易い舞台だったと思う。それを成立させる構成、演出、役者さん達。おそろしや 笑


そして、義経以外は全て幻のように歪んで消えていくようなラスト、一人取り残されて佇む義経に、冒頭と合わせて、今まで観たものは海に沈んだ亡霊達が過去に囚われて繰り返し演じている舞台なのか、兄に疎まれて破滅に向かう義経の心が生んだ妄想なのか、等と想像が膨らみ、しみじみと余韻が残った。

とは言え、これは中途半端に知っている😅私の捉え方。

義経千本桜を全く知らなくてもそれはそれで興味深い世界が感じられたと思うし、歌舞伎、文楽、能等、多くの知識のある方はより深く、色々な拘りやお遊び等にも気づくことが出来て、各々に楽しめたのではなかろうかと思う。


お話は「義経千本桜」そのままなのでとんでもない所はとんでもない。歌舞伎の話は忠義のためなら人の命は二束三文・・・😓


義経の話と言うよりは、落ち延びた平家の公達と彼らを取り巻く人々の物語、悲劇。

義経自身も逃げているのだが、まだ余裕がある時期の設定なので彼らに若干の救いの手を差し伸べる展開が多い。それが尚更ラストの無情感に繋がる気がした。


役者さん達はメインの役だけでなく、名前のある他の役、黒衣のような役、舞台裏でのフォローなど全員が八面六臂のご活躍、殺陣あり、踊りあり、アクロバティックな動きあり、さぞ大変だったことと思うけれど、皆様、楽日の役者紹介までとても楽しそうに見えて、観ているこちらも楽しかった。


ここからは役者さん。


義経役の武市さん、台詞の抑揚等はまだ不馴れな感じがちとしたけれど、回を追う毎に生き生きとされてきて、毅然とした姿だけでなく静御前をつい追いかけそうになる姿も育ちの良いお坊ちゃんらしくて素敵だった。


静御前の永澤さんは、まあ、綺麗、可愛い、お勇ましい。お声もたんとよろしくて、そりゃ、義経殿、惚れるでしょうよ、と思った 笑

善太君の時もとても活発で可愛くて、洋さんの綺麗で優しい小せんさん、大介さんの悪ぶっていても家族思いの権太さんと合わせて、とても良いご家族。だからこそ酷いと思う鮨屋の話(わかってるなら周りに無理させずに逃がしなさいよ、頼朝殿、と思う😥)


維盛殿の押田さん、弥助さんから維盛殿に切り替わる背中が綺麗だった。その後の第一声は調整がちと大変そうだったけれども(^_^;)

土佐坊、狐の精?の動きのキレは流石だった。


丸川さん、小金吾殿は爽やかで傘売りのお声も素敵、殺陣の青いお着物姿の時は図書様のようでもあり凛々しくて、お主を守って散る姿は切なかった。他のお役の時は何かもうやたらノリが良くて(ラップとか 笑)お声もよろしく、知盛殿を追って自死する姿ですら明るく軽妙でつい目で追ってしまいまいた😅


谷山さんは、いやー、凄かった。あの源九郎狐の身ごなし、可愛さ、忠信殿としての凛々しさ、猪熊殿の時の軽妙な狡さ、可笑しさ、各々で変えたお声、台詞。最後の頃はかなりお声はキツそうだったが😅、とても素敵だった。楽日の役者紹介で「やりたかった役、念願が叶った!」とちと枯れてるけれどいつもの可愛い(笑)お声で仰った笑顔もとても素敵だった。


大介さん、権太さんは先にも書いたが悪ぶっていても根は家族思いの良い奴、だからこそ最後は切なく哀しい。

母上とのやりとりは一人オレオレ詐欺みたいだったが(笑)、それもわかった上で母上がお金を渡したくなるのがわかる可愛げ、素敵だった。小金吾さんにたかる所は、この二人、富姫と図書様だったのに、とふと思って内心吹き出していた 笑

そうそう、他に丸川さんの入江殿と出てくる相模殿はやり取りが子供っぽくて可愛いし、散ばら髪で出てくる時は動きも見かけも文楽人形そっくり、そして個人的には最後の頃に出てくる顔を隠したお女中の時の仕草が可愛くて好きなのである 笑


磯村さん、亀井殿。綾央さん、駿河殿。

今回は顔を隠した時も含めてこのお二人はセットなので切り離して書けない 笑

一度「仲良し!」と大向こうが飛んだが(笑)、本当に仲良さそうで楽しかった。

お二人とも台詞も仕草もしっくりしていて、いつも楽しそうに演じてらっしゃるように見えて心地よかった。

綾央さんは、静御前の後ろでノリノリで踊ってる姿が素敵、磯村さんは駿河殿を驚かせて悦に入ってるお顔が楽しかった 笑


秋葉さん、まずは弁慶。勧進帳などと異なり、ここでの弁慶は忠義者ではあるがかなりの粗忽者(^_^;)  

しょっちゅう義経に怒られていて、何方かが言っていたがまるでゆるキャラのようなホッとする存在?笑   

勿論強くて、粗忽さも憎めないおおらかさと愛嬌があってホームランも打ってたし?良かった。

そして、息子が可愛くて仕方ないお米さんも素敵。腹を刺されて瀕死の息子を前にいきなり踊り出し、「ははじゃひと?」と呆気に取られて呼び掛ける権太大介さんの雰囲気も良くて、何だろう、この悲惨さと可笑しみのバランスの妙と思った。ついでに、この母子は「かぶき座の怪人」だとチラッと思ったり・・・(劇団公演の面白さ 笑)


雷象さん、六代君。

可愛い・・・。

見かけも雰囲気もおっとりとなんかポニャポニャ、品もあるけれどどうもつっつきたくもなる可愛さ 笑   

小金吾殿も通常はひたすら敬っているけれど、何かの拍子にはつい遊んでしまいそうになるのを抑えていたのではあるまいか、と木の実の捨て方などを見ていて思った 笑


横道さん、若葉の内侍と飛鳥殿。どちらも良いところの奥方様。

どちらも旦那様よりも大柄だったのだが(^_^;)、たおやかで気品のある気丈な奥様、良かった。


北沢さん、いやー、変幻自在。

藤太殿の楽しい三枚目振り、小せんの色っぽさ、可愛さ、覚範殿のぶっかえりも含めた豪快さ。お見事でした。個人的には、小せんさんの可愛さにクラクラしました 笑


大井さん。は、バケモノ(全面的に褒め言葉)笑

20代の義経殿と静御前に挟まれて、全く遜色なくお可愛らしくお綺麗な(実年齢50歳の)卿の君。仕草も表情も麗しく、義経と実父のために自害するシーンは切なく健気。

さらには御歳6歳?の安徳天皇。「んばぁ」「はぁさま」の呼び方もお可愛らしく、天子として話せば気品もあるし、何なのでしょうね、この方は😅

鬼佐渡坊は他のお二人とトリオで楽しかった 笑


さて、桂さん。

いやぁ、もうねぇ・・・見とれました。

銀平殿は頼もしい色男、ちとくだけた口調もカッコいい。初日辺りははける時の足取りがとても軽くて実はちと違和感があったのだが、数日後に観たら踏みしめるような足取りに変わっていて尚更貫禄が増して良かった。

そして知盛殿になると、なんかもう・・・美しかった。様々な所作が能に近いものだったと思うのだが、清廉な色気と霊気が匂い立つようでクラクラした。

そして、ラストの後ろ向きに飛ぶシーン! 

最初観た時は一瞬、息が止まった。美しかった!

その後、何度観てもあのシーンは固まって観ていた。素敵だった・・・

梶原殿も意地悪そうで実は頼朝殿の意を汲んでやって来た人。陰険そうながら、弥左衛門夫妻のやり取りにオタオタしたり、普通の眼鏡(老眼鏡? 笑)で首実験して、そのまま権太さん見てお互いびっくりしたり、また妙に人間味のある人で素敵? だった 笑    (で、わかってるなら権太さんの妻子、何処かで逃がしてやりなさいよ、と思う😅) 

法橋坊は鬼佐渡坊に同じ 笑


山下さんも変幻自在 笑

川越太郎殿と河連法眼殿はどちらも敬う方に対して謹厳実直(その方のためになら嘘をつくことも厭わないので、ちと違うかも知れないけど)、尼妙林はおおらかで親切、しかも武芸に秀でている驚異の尼ごぜ。殺陣でも踊りでも山下さんの所作はさすがお綺麗だった。


原川さんは、諸悪の根源?藤原朝方。はまってるし、確かに悪と思えて敗れれば嬉しく思うが、キャラとして魅力的にも感じるから面白い。

そして、弥左衛門殿は根っからの善人、女房お米さんとのやり取りも、娘お里さんとのやり取り(デカっ! 笑)も楽しくて、こちらもはまってらした。小金吾殿の首を落として持ち帰るシーンはやけにリアル(後で出てくる首はあの、ボールに顔、だけど)。

しかし、誰もいない部屋で維盛様な弥助さんにお茶を命じておいて、次のシーンでは敬うという切り替えの心理は俗人にはよくわからん (^_^;)


そして最後に加納さん。

ゲネプロの慌ただしさの中でも、お一人断トツに歌舞伎だった。

渡海屋女房お柳の時の商売人のしっかり女房らしさ、内侍の局としての気品、厳しさ、すし屋娘お里のおきゃんな可愛らしさ(ナウシカのあの曲歌いながら出てらした時は吹き出した 笑)、弥左衛門殿と台詞を被せている時のノリノリ振り(これは'傾く'のかぶきだな) 笑

今更ながら恐れ入りました。

臆してしまって「二子玉屋!」と大向こうかけられなかったのが心残り(^_^;)


追記

楽日の役者紹介の時、桂さん、大介さん、各々に「この役をやらせてくれてありがとうございました。」と加納さんに頭を下げてらしたのも微笑ましかった。

あらすじは今回はパス。

花組芝居のページはじめネットに出てますからね。

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