光垂れーる(ネタバレあり) その2
ぽこぽこクラブ vol.6
阿佐ヶ谷 アルシェ
2019年12月8日昼 他 観劇
お芝居の情報はこれの1つ前の感想にあり。
書いておきたいことをとりとめなく書く 笑
(あくまで私の勝手な見方、それもお前の答えの一つ、と言うことでご容赦(^_^;)。私には私の想像を越えるものを理解出来ない。だから、私にとっての世界は私の想像通り。これは鴻上さんの戯曲の言葉 笑)
そして長い。しょーもなく長い。
誰に言い訳にしてるんだ? 自分のために書いてるのに 笑
東京初日にまず思ったこと。
前説の方々も去って開演直前の少しの時間、陰でアップしている役者さん達の声と揺れる影がセットの隙間から漏れてきたのだが、個人的にはこれがとても良かった。
内子座で観てすでに話を知っているせいもあって、お芝居と繋がっている一種のプロローグのようにも思えてドキッとしてしまった。
(内子座ではちゃんと控えがあるのでこれは無かった。)
そして、静寂の中、セットの陰からべーさんが現れる。一瞬にして空気が変わる。
内子座の時は客席通路を語りながら歩いてきたのだが、こちらは波が引くように客席が静まっていき、人々の目が彼に集まっていくのが素敵だった。
べーさん、やっぱりすごいと思うのは基本的に陽気で賑やかな"神様"(自体もすごいけど)の後ろに隠れているお父さん、表に出ると途端に大人で真摯で、色っぽくすらなる。お顔真っ白なのに(^_^;)
帽子を脱いだ時の髪のちょっと乱れた感じが妙に色っぽく、一方で相手を見つめる表情がひどく真摯で、二回ともドキッとさせられる。最後の祭のシーン、センターで踊る姿を思い出すとまた泣かされそうになる。
さて、冒頭、セットが一斉に動き出す時、わかっているのに毎回鳥肌が立つようにゾクッとした。あのセットの使い方も見事だった。照明の威力も合わせて、あの舞台が幾重にも重なり、広がり、また収束する。最後列から観た時は特に見惚れた。
力強く、時にたおやかな踊りもとても良かった。美しかった。何かに捧げる踊り。下司さんの凄さを思い知る。音楽もとても合っていて(これはオレノさんの凄さか)、観た後の普段の生活で気がつくとその音楽と掛け声が頭の中に流れていて困った。
で、瑞穂さんと神様のシーン。可愛いけれど一人でずっとそこに居る強さもある磯部さんの瑞穂さん。
「私が見えるの?」と聞く瑞穂さんに笑いかけるべーさんの笑顔はモノノケのそれに見えて、面白いなぁと思った。
もう少し後のシーンで「神様じゃ!」と名乗るのだが、その時の何か内面で葛藤しているような表情もあり、このモノ本体はモノノケで、たまたま拾って被った帽子に宿る父親の強い想いが瑞穂を見つけた時に溢れ、それの精神を乗っ取ったのかも、なんてことを思った。青嵐の逆だな 笑
そしてお供えの儀式?のシーンで、すんなりと特徴が掴める御能村の人々。
きちんと真面目でどこか憂いも見える村長、潔癖と言いながら千加ちゃんが心配で社の中にもすぐに入るみやっち、みやっちには悪態をついたりしながらも甘える面も見せるしっかりものの明るい千加ちゃん、迫力美人の弥生さん、純朴で真っ直ぐ、わかりやすく好青年な真ちゃん、こちらもわかりやすく天然だけど好青年ではある黒ちゃん、その好青年二人に好かれている今は溌剌として可愛く真ちゃんを愛する明美ちゃん。
本当にどのキャラも魅力的だった。
女性陣は明るく強く、男性陣はやや気弱ながら優しくて真っ直ぐ。
瑞穂ちゃんもここに溶け込んではいるけれど、時々ふっと寂しげな表情を見せるのがまた魅力的。一人でいた時の方が達観したようなさばさばした表情をしていたような気もして、なまじ、届きそうで届かない時の方が切ないと言うのはあるかもなと思う。都会から来たミステリアスな可愛い少女って磯部さんぴったりで、東京ラブストーリーの時や冥婚式の件での小悪魔的な仕草もまあ、可愛い、可愛い 笑
そして登場する、とても世俗的な諭さんと理沙さんのカップル 笑
お調子者っぽくて優柔不断だけど、多分誰からも憎まれない可愛げがある諭さん、自分に正直で明るく元気なイイ女!理沙さん。
柏さんのどこか気弱なやんちゃ坊主みたいな雰囲気もぴったり合っていて(すみません😅)、可愛い諭さんだった 笑
そして、魂の叫び?も鮮やかな都倉さんの理沙さん。くるくると変わる表情も魅力的で、ホント、イイ女。弥生さんと意気投合したやり取り、諭さんを巡っての瑞穂ちゃんとのバトル、小山さん、磯部さんとの息もぴったりで、見得をするシーンなど時々拍手しそうになった。
イイ女なのは小山さんの弥生さんも。彼女の叫びも素晴らしかった 笑
豪快で強くて理沙さんの気持ちもわかってくれて優しくて、しかもあんな美人(ま、今回の女性陣は外面内面ともべっぴんさんしかいないけど 笑)。
冨士夫さんはなるほどヒヤヒヤだろうけど😅、その彼女に結局は愛されてるのだから、貴方も相当な人だと思うぞ 笑
途中から離婚式?の件で冨士夫さんの額にキスするようになったのだが、ここも拍手しそうになった 笑
結婚指輪をしている冨士夫さん、してない弥生さんに気づいた時は内心、なるほど、細かい!と感心してしまった。
一方的に冨士夫さんがやり込められてる弥生さんとのシーンも良いけれど😅、冨士夫さんは実はとても重要な使命を持った人。
向こうの世界とこちらの世界の繋がり方を村人達に伝え、諭さんの多分、本人も気づいていなかった心の隙間をさりげなく埋める。
おちゃらけてるシーンは可愛くて、諭さんと二人のシーンはしっかりお父さんの顔、雰囲気になる玄太さん、内子座の段階であのシーン、玄太さんの底力を見た、と思った 笑
柏諭さんとのシーンはますます息もあって、泣きそうと言う二人に簡単に泣かされる観客😅
弥生さん&理沙さんからの猛烈な攻撃に、聞こえないはずの二人が身を傾げるシーンや、「(届け出用紙なんかじゃなく) 大事なのは人と人」と冨士夫さんと弥生さんが声を揃えて言うシーン、玄太さん、小山さんの台詞の合い方にゾクゾクしたし、また泣かされた。
諭さん&理沙さんには、勿論、プロポーズの場面でも泣かされた。
東京ラブストーリーの時の諭さんと瑞穂ちゃんのあざとい (笑 )やり取り&後ろで悶える理沙さんもとても見応えがあるけれど 笑、「何回俺にプロポーズした?」「100回くらいしたわ!」からの「101回目は俺が貰う!」の展開。
これ、内子座ではなかっただけに、それが来たか!と吹き出してしまったが、セルフナレーション付でシーンを再現する柏諭さんのどこか可愛い迫力と、それを見つめる都倉理沙さんの溢れるような笑顔、こう書いていてもまた泣きそうになった😅
ま、このお芝居、泣かされるシーン、書きたいシーンが山積みで、いつまで経っても終わる気がしない(^_^;)
でも、書く 笑
酒屋の千加ちゃんのお母さん(ババ、とみやっちは呼んでる)、認知症が進行中で、薬を飲むと落ち着いて26年前に死んだ娘の存在が腑に落ちない。薬を飲まなければ、認知症は進むが千加子の存在を普通に受け入れる。根本は娘を失ってもここで生きてきた気丈な女性でお茶目さも見える水原さんのババ、素敵だった。
そして、心配した娘があの世から迎えに来たと理解した時に告げる台詞が「死ぬまで生きる。それが生きている者の務め。」
カッコいいです。泣かされた。
見守るみやっちと千加ちゃんのシーンは微笑ましい。
三宅さんは住み着いているわけではなくて(家はここにもありそうだけど)、限界集落を見回る行政の人なのかとも思う。
ババを時々見にきていて、甦った千加ちゃんに最初は驚いたろうけど惚れた、と 笑
内田さんの千加ちゃん、罪作りにキュートだし。お土産の髪飾りを喜ぶ千加ちゃん、すごく可愛くて、そりゃ、陰でガッツポーズするよね、みやっち 笑
しっかりしてるくせに時々脆くて、すがるような目をして「私はなぜ甦ったの!」
「俺じゃ、ダメか?」
言うよね、みやっち😅
で、「俺達も冥婚式するか!」
「(キョトンとして)なんで?」(^_^;)
楽日にたまたま機会を得て、思わず、内田さんに「千加ちゃん、ひどくないですか?」と聞いてしまったぃ 笑
答え、「だってお兄ちゃんだから・・・」
あ、あー、なるほど。
お兄ちゃん、大好き!な笑顔ですか、あれは😓
罪作りだねぇ 笑
内子座の時は一輝さんがみやっちで、千加ちゃんの雰囲気と合わせてどちらかと言うと弟っぽくて、お姉ちゃんが「なんで?」と言ってる感じだったかも知れない、そう言えば 笑
北村さんのみやっちは、ちとぶっきらぼうだけど良い人らしさが滲み出てる感じで、あー、確かにお兄ちゃんっぽいかも。良かった。
(一輝さんのみやっちはちといじけそうな雰囲気も可愛い弟キャラだったと思う 笑)
東京ラブストーリーの曲に合わせての場面転換に出てくる時のアクションが毎回かっこよくて、その後が可笑しいだけに余計に見物だった 笑
その東京ラブストーリーの曲に乗って踊りながら場面転換するシーン、3組のカップル?😅のやりとりが各々違っていて可笑しくてどれも観たくて困った 笑
どこかのドラマのワンシーンみたいなのを色々やってくださるのだが、男女(みやっちと千加ちゃん、真ちゃんと明美ちゃん)でやっても可笑しいのに、一組は村長と黒ちゃん。何なんだ 笑
でも、あのシーンの最後の方は一輝さんのモデルウォークみたいなのに毎回気を取られて見つめてしまった 笑 そうそう、オレオレ詐欺辺りのところは一輝さん作だそうだ 笑
さて、生者と死者ではあっても、本当にあったかくラブラブカップル、真ちゃんと明美さん。
二人でぼーっと星を眺めている表情がそっくり過ぎてつい微笑んでしまう 笑
内子座で初めて観た時に、とにかく純粋な真ちゃんが素晴らしくカッコ良くて泣かされた。
匂いで生命の息吹きを感じる姿も素敵だし、明美ちゃんと別れることを最初は反射的に「嫌だ!」と言ってしまう所も、落ち着いてしっかり考えて明美ちゃんの将来と向き合う姿も、黒ちゃんに無謀に突進しそして頭を下げる姿も、「大丈夫なんだから!」と強がる明美ちゃんを抱き締める姿もピュア過ぎてキラキラしてた。さかもん、恐るべし。
それを受けるくららさんの明美ちゃんもまた負けずに素敵だった。
真ちゃんとのラブラブなやり取りはとにかく可愛くて、真ちゃんを好きな気持ちと将来を考えない訳ではない板挟みの苦悩の表情がちらつくのも良かった。明美ちゃんは賢い人なんだと思う。だからこそ過去に追い詰められたこともあったのかも、なんて思えた。
真ちゃんがいるのに明美ちゃんを好きになる黒ちゃんの気持ちもわかる。
ピュアと言うよりは天然?な黒ちゃんは、その分、現実をシンプルにストレートに見極めている感じ。本能的に生き方を知っているような・・・
小河さんのおおらかな笑顔は黒ちゃんにぴったりな感じがした。家族に法要してもらいなね、と言われて村長を抱擁してしまうズレたところも、何とも言い難い表情で腕を外す一輝さん村長も合わせてあのシーン好きだった 笑
さて、村長の一輝さん。
真面目で誠実でいつも一所懸命に努力してきた人と言う雰囲気はとても感じた。今の状態に悩んでいるのも、生者に嫉妬と言うのもすんなり納得できた。
虚構の劇団ではどちらかと言うと黒ちゃんぽい役が多かった気がする一輝さんだけれど、人には優しく、自分には厳しいどこか焦燥感が漂うこういう役、はまると思う。
先の感想にも書いたけれど、
「生きていると言うだけで君達にはゼロではない可能性がある。」
普段ならちと斜に構えて聞いてしまいそうな言葉が彼の口から出るとすっと入ってきた。
可能性と言う点についてはぐるぐる考えてしまう所があってそれは後で書くけど、とにかく村長の抱いていた夢はこの状態では叶わないものなのだろう。
そこから生者の可能性に繋がり、自分だけでなく村を終わらせることを考えたと言うことかな。
独りよがりとも見えるけれど、客観的に状況を見ている責任感の強い人なのだろうと思った。
そして最後の祭のシーン、一人少し離れて語る村長の姿が照明で浮かび上がる。とても綺麗だった。
さてと、今回のお芝居、ついつい色々な解釈を試みたくなってしまうのも魅力の一つだと思う。
と言う訳で勝手なことを書く 笑
「(自分は)どうして甦ったのか。」と村長も千加ちゃんも問う。
真ちゃんは「明美に会うために甦った。」と言い切るけれども。(それもお前の答えのひとつ、だな。)
神様が死者達を甦らせたのは瑞穂ちゃんのためだとして、その人が甦る理由は遺品があっただけではなく、その人自身のこの世への思い入れなのではないかと勝手に思ったりする。ま、台風で亡くなった方々はほとんど気持ちが残っているだろうから、皆、甦る気もするけれど。
甦るのは誰かのため、誰かの希望ではなくて自分の想い。それが満たされれば次に進める。なんてね。
甦った死者達には可能性はない。最初、それはそうだと思ったのだが、あそこまで生者と変わらない死者達だと本当に可能性はゼロなのか?とふと思った。
生者と一緒に年は取れない。子供も持てない。
村から出られない。
同じ生者と一緒にいつまでも暮らす訳にはいかない。だから、生者を縛り付けるのは良くないと思う。
でも、例えば農作物の改良とか天体の観測とかの研究系、絵画、彫刻などの美術系など、期限を切られずに探求出来たら面白いことも色々あるよな、なんて思ったりして・・・
ただ、それがある程度モノになってからの先がないのか。発表出来る場。認められる場。
村長の言う可能性とは、他者が存在し、承認して貰える何か、になるのか?
でも、それは生者にこの村に来て貰えば良いような・・・
いや、となると期限のある生者がそれを許さなくなるか・・・なんて考えていたら、心温まる世界から殺伐としたSFになりそうになって止めた😅
生きていると言うことは何だ?
変わる、変化する、そしていつか死ぬ。
「いつまでも幸せに暮らしました。」だとお伽噺になってしまうのか。
一緒に年を取れない死者達はロボットと同じか・・・と思ったら、アシモフのSF「アンドリューNDR114」が浮かんだ。人間になりたいアンドリューが最後に求めるのは死ぬこと。そのままなら部品を交換していつまでも存在出来るのに、わざと寿命を設定して朽ちる。
期限があるからこそ輝くもの、一所懸命になれるものがあるとは思う。
何となくだが、あの"神様"はあの後もずっとあの場に居続ける気がしてしまう。
瑞穂さんにあそこから動くきっかけを与える為に村を作った。
だから、瑞穂さんが望めば他の人々の気持ちなんぞは聞かずに村を終わりにしようとする。そこのところはかなり独善的。元々、村人のためじゃないのだから当たり前。
5年前に諭さんが帰省した時はなかったのだろうし、一番新しい移住者の黒ちゃんは1年弱。その黒ちゃんは、死のうとしていた明美ちゃんのことを知らなそうだから、明美ちゃんが元気になるまで1年?なんて考えると、あの村は2年か3年前くらいからあるのかな?
とすると20年以上も瑞穂さんは一人さ迷っていた?
これも勝手な想像 笑
やはりあの本体はあの地に根差したアヤカシ、モノノケで、たまたまその地で朽ちた父親の帽子が奇跡的に保存された状態であったのを見つけたのが数年前。で、帽子に残った父親の想い、魂が瑞穂さんを見つけて・・・
ちょっとタンジェリン入ってるな(^_^;)
モノノケと一体化してしまった父親の魂はそこからもう動けない。
ような気がする。
ラストの瑞穂さんの台詞、「お父さん」が入る回と入らない回があった。
どちらも各々に良いと思う。
「お父さん」が入らない時は、それこそまた色々想像出来る。
その土地の氏神様のような存在が瑞穂さんを見初めてやったこと、とかね。(そう考えた時、エリザベートか?とチラッと思ったり・・・笑)
帽子を被せた後、神様は瑞穂さんを見ない。
そこも色々考えてしまう。
解釈次第で、かなり異なる印象の舞台にも出来そうだ。
とにかく今回の舞台には引き込まれて、引っ張られた。
内子座版も東京アルシェ版も観ることが出来て良かった。
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