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花組HON-YOMI芝居「かもめ」(ネタバレあり)

8月8日昼(初日)、9日昼、11日夜観劇 セーヌ・フルリ

原作/アントン・チェーホフ
訳/神西清
構成・演出/加納幸和

キャスト:
アルカージナ=加納幸和
コースチャ=美斉津恵友 
ソーリン=磯村智彦 
ニーナ=二瓶拓也 
シャムラーエフ=秋葉陽司 
ポリーナ=松原綾央 
マーシャ=堀越涼 
トリゴーリン=小林大介 
ドールン=桂憲一 
メドヴェジェンコ=押田健史(研修生)

良かった。
いやー、もう、アルカージナはそのものだと思う。


「かもめ」を観る度に書いているが、私は何故かこの戯曲が好きなのだが(何なんだ、こいつらはと呆れ返ったり、苦笑したりしながらなのだけれど)、舞台となるとなかなかしっくりくるものに出会えなくてもどかしい思いをすることが多い。
( もっとも、少し前にあったケラさん演出の「かもめ」は個人的にはかなりぴったりきて嬉しかった。)

そんな中で、以前、花組の大井さんがコースチャだった舞台はとても好きだったし、前回の花組のリーディングもなかなか好きだった。
なので、今回も相当期待はしていた。


期待は裏切られなかった。

1時間25分でしっかり十分「かもめ」全編である。
さすがだ。ま、仮名手本忠臣蔵を3時間程度でしっかりやってしまわれる花組なので驚くことではない 笑

中身は予想以上にオーソドックス系、アルカージナとコースチャなどはそのもの過ぎて感心を通り越して吹き出しそうになったくらいだ。
でも個々にはあまり見ない印象になっている方々もいて、それらのキャラがくっきりしているのに、全体としてすんなり溶け込んでいてとても面白かった。(ま、所詮、皆自分のことばっかり、と言うのは変わらないのだけれど。)

構成も素敵だった。

花組のリーディングなので、リーディングと言っても動く。台本持ちながら、相手と実際にやり取りする。アルカージナなんてトリゴーリンを組敷いて口説きますからね 笑

舞台セットは、椅子とテーブルとそれを使った台、一面の壁の鏡とカーテン。それから「かもめ」の空間を縁取るグラスに入ったたくさんの蝋燭の灯り。

全員、衣装は黒なのだが、和洋様々、それぞれの役の印象にぴったりな感じでとても良かった。

いろいろ印象的なシーンはあるのだが、うわぁい、と言う感じで上手いなあと思った1つは、前半と後半の切り換えのところ、モスクワでまた会えると情熱的にニーナにキスして抱きしめているトリゴーリンの回りをアルカージナが何回か回り、やがてちゃらっとトリゴーリンの手を引いて連れ去っていく。抵抗しないトリゴーリン、唇を噛み締めて見送り反対側に去っていくニーナ。

大抵の舞台ではここは休憩が入って、二幕が始まるとそこは数年後、なのだが、後でコースチャが語るニーナの顛末がすんなり理解出来る。


役者さん達もそれぞれ良かったけれど、個人的には、そのもののアルカージナ、コースチャがとても良かったし、トリゴーリンもかっこ良すぎないのが素敵だったが、あまり見たことがないドールン、マーシャ、ポリーナがすごく好みだった。

堀越さんのマーシャ、迫力があって骨太。でもコースチャを見る目は乙女。綾央さんのポリーナも一見楚々としているようで結構女としての業をあからさまに感じる。この二人、本当に母娘だなと思う。
で、その二人に絡むようでさらりと受け流して許されてしまうドールン。桂さん。あんなに男性としての表情でポリーナを見るドールンなんて初めて見た。コースチャやマーシャを見る目は優しいけれど冷静で客観的。ずるいっちゃずるいのだが、つい許したくなってしまうかっこよさ。決してでしゃばっている訳ではないのだが、つい引き寄せられる。ええ、出てらっしゃると見とれてました 笑

でも、正直、ちと違和感を感じたところもある。 戯曲の読み方は人それぞれだからそれで良いのだと思う。

以下、あくまでも私個人の感じ方なのでご容赦下さい(^_^;)

冒頭のニーナ、私のイメージだともっとキラキラした純粋な幼いくらいのお嬢さんで、コースチャとのおままごとみたいな恋愛にも子供っぽく夢中になっている雰囲気なのだが、今回のニーナは最初からすでにコースチャよりも大人になりつつある感じで(すでにコースチャの片思い状態…)ちょっと若いアルカージナみたいな雰囲気を感じてしまった。
観劇仲間に、だからこそコースチャは惚れたのでは?と言われて、なるほど、そう言う見方もあるかと思った。
ただ、11日夜に観たら前回よりも若いお嬢さんっぽくなっていてちょっと嬉しかった。

それから、ソーリンももう少し柔らかな牧歌的な雰囲気も持つ人なイメージだったのだが、今回はかなりイライラした感じが強くて、いかにもアルカージナのお兄さんだな、と言う気はした。その分、コースチャを思う気持ちがあまり見えなかったかも。磯村さん、杖のつき方がお上手で本当に持っているのかと思った。

こう書いていても、やはり捉え方次第だなと思う。面白いやね。


ともかくも、とても好きな公演。
15日夜までだが、お盆で帰省してしまったので次は15 日までお預けだ…

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