マクベス(ネタバレあり)
2月8日夜、14日昼、29日昼観劇 シアターコクーン・オンレパートリー2013 シアターコクーン
原作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出:長塚圭史
キャスト:
マクベス:堤真一
マクベス夫人:常盤貴子
バンクォー:風間杜夫
ダンカン王:中嶋しゅう
マルカム:小松和重
ドナルベイン:斉藤直樹
マクダフ:白井晃
マクダフ夫人:池谷のぶえ
ロス:横田栄司
レノックス:玉置孝匡
魔女1:三田和代
魔女2/侍女:平田敦子
魔女3/老人:江口のりこ
貴族/シートン/他:市川しんぺー
将校/門番/マクダフの息子/他:福田転球
医者:風間杜夫
シーワード:中嶋しゅう
小シーワード:斉藤直樹
ヘカテ:池谷のぶえ
使者:常盤貴子
幻影:市川しんぺー、福田転球、中嶋しゅう、斉藤直樹
暗殺者1/アンガス/他:山下禎啓
暗殺者2/メンティス/他:伊藤総
暗殺者3/ケイスネス/他:井上象策
フリーアンス/他:六本木康弘
クロマティ/他:松浦俊秀
アバディーン/他:菊地雄人
マクベス城の召使い/他:縄田雄哉
良かった。私はこの「マクベス」好き。
もっとも、初日の前半は正直どうかなぁ?とも思った。
客席に魔女や王子達が紛れ込んだり、冒頭で客席に呼びかけたりなどの趣向はあったが、予想していた以上にマクベスの台詞そのもの。
台詞を口にする役者さんが自ずと場の中心になるように感じられるシンプルな場面が多く、役者さんの技量がもろにわかる。
どの役者さんも台詞が綺麗に聞こえてきて、個人的にはそれだけでもかなり好印象ではあったのだが、さすがに皆様、まだ固くて客席の反応を十分捉えているという感じではなかったし、台詞自体が結構ややこしいので、登場人物の名前や背景を知らないと聞いているだけで疲れてしまうのではなかろうかと言う気もしたのだ(^^;
でも後半、個人的には一気にプラス方向に傾いた。
物語も動くし、そして何より、堤さんの殺陣!!
剣ではなくて傘で、しかも本人、相当投げ遣りな感じで無造作なのだが、いや、もう、かっこいい、かっこいい。
見惚れた。
その上、ラスト。
自分の首を討ち取って狂喜乱舞する群衆(大きな張りぼての首を、役者さんがサポートしつつ観客参加で客席中を転がす。)を見ている堤マクベスの表情がもう・・・。
呆れたような、困惑しているような、面白がっているような、いろいろな感情が入り混じった何とも言えない表情で、ドキッとして目が離せなくなってしまった。
いやー、このマクベス、好きだわ。
もうこれで完全にOK。十分チケット代の元は取れた、と思った。
そして2回目。
初日は奥側のS席で観たのだが、2回目は舞台にごく近い特設S席、しかも地下から上がってくる出入り口の真ん前。
これがすごく良かった!
役者さんの表情もとてもよく見えるし、客席も使った舞台の中、物語の中に入り込んで観ている気がした。
傘で作ったバーナムの森も綺麗に見えたし、マクベスの首を狂喜して弄ぶ群衆(観客)を見ていて、それを眺めるマクベスの気持ちも何だかわかるような気にもなれた。
また役者さん達もずっと馴染んできて、客席の巻き込み方も良い感じに上がってきていて、すんなりお芝居に引き込まれた。
入り込んで観ると、今回の”マクベス”の面白さがさらに感じられた。
とにかく、マクベスが小っちゃい(^^;
これまで観た舞台では、大抵、高潔だったマクベスが魔女達にそそのかされて堕ちていくようなのがどうも苦手なのだが、このマクベスは最初からドタバタとどうも落ち着きがないし、闘いが強いだけのごく普通の人。
魔女に騙されても仕方ないなと納得してしまうので、堕ちていくのにあまり抵抗がない。
あまりにもしょーもなくおバカちゃんなので、苦笑しつつかえって引き寄せられてしまったくらいだ。
これは堤さんだからと言うのも大きいと思う。この憎めないしょーもなさ加減。
その気になれば高貴な血を引く松永誠一郎さん(吉原御免状)などもすっきりとはまってしまう人なのに、さすがだ 笑
バンクォーの方がしっかりしていてマクベスをサポートしてくれていたからこれまでやって来られたのでは?と思えた。
最初、風間さんがバンクォーと言うのはバランスが悪くないか?と思ったのだが、むしろだからなのかと2回目で納得した。
今回の舞台、マクベスだけではなくていろいろな人が小っちゃく思えた。
ダンカン王もせいぜい地方の豪族の長くらいな感じ、小松さんのマルカム王子は、マクダフを試すために自分を卑下するところのテンションが思いっきり高くて、その勢いにまた笑って好きになってしまったのだが、この人も何だかなぁ、だ。
そして、マクダフもそう。こんなに迂闊だと思ったマクダフは初めてである。
あの状況で奥さんと子供を置いて行って大丈夫だと思う方がどうかしている。奥さんの嘆くのが至極もっともに思えた。
この奥様を池谷さんが演じておられたのだが、素敵だった。
人としてはごく普通の奥さんだと思う。嘆きもするし怒りもする。そのごく普通な様が艶やかなお声と相まってとても素敵だった。
魔女達を仕切るヘカテの時も圧倒的で素敵だったな、池谷さん。
魔女達は別に大きくも小さくもない。どこにでもある誘惑が形を取ってるだけなのかもと思える。
ロスは小さいと言うよりは少し違う立ち位置にいる人な感じで、手の出しようがなくて哀しい顔して傍観している。
横田さんの綺麗な台詞と正統派な雰囲気がちょうど良かった気がする。
マクベス夫人の常盤さんは、一所懸命に突っ張ってみた普通の奥さん。無理やり頑張ってなんだか空回りしている感じがこちらも合っていたのではないかと思う。
他にも転球さんやしんぺーさん、山下さん、良く見る方々がしっかりとシェイクスピアの”マクベス”の台詞をほとんどそのまま綺麗に語りながら、遠いんだか近いんだか不可思議な世界を創り出していて面白かった。
楽日も特設S席だったのだが、これが奇しくも前回と同じ席。
良い席なのは実感していたので嬉しかったのだが、前回、唯一残念だったのがバンクォー風間さんの背中で堤マクベスが完全に隠れてしまって表情が見えなかったこと。
楽日もあの表情が観られないのか・・・と内心がっかりしていたのだが、この日は少し位置がずれていたらしくてちゃんと見えた。つまり、完璧。
この席、マクベスの堤さんがすぐ目の前にいらっしゃることが何度もあって、このしょーもないおバカちゃんなマクベスに苦笑しつつも惹かれてしまった私としては、マクベスにも堤さんご本人にも二重に見惚れてしまい、これだけ近くで観ても、やけくそで無造作に敵を斬り伏せる堤マクベスはものすごくカッコよくて、前回も楽日もクラクラした 笑
十二分に堪能した。
それにしても、同じ松岡さんの翻訳を使っているので「メタルマクベス」の歌が相当にそのままマクベスの台詞であることを改めて実感した。
台詞を聞いていると「メタルマクベス」の歌が時々浮かんでしまって、若干困った。
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