見てないで降りてこいよ(ネタバレあり)

ぽこぽこクラブ 早春公演

オメガ東京


3月10日16時、3月14日16時 他😅 観劇


作・演出:三上陽永


キャスト:

ナオキ:山岸賢介(ウラニーノ)

ケンジ:三上陽永(ぽこぽこクラブ)

アカリ:都倉有加(シープラス)


男1、不良、生徒会長、医師等:渡辺芳博(ぽこぽこクラブ)

男2、不良、歌の先生、ナオキの母 他:坂本健(ぽこぽこクラブ)



この公演の前に、劇小劇場で「若手演出家コンクール」の応募作品として上演され、最優秀賞!

おめでとうございます😄


コンクール(数は少なかったが観客も入れたし、配信もあった)の時からとても良かったけれど、オメガ東京でさらに変化、進化、あちこち挑戦し続けていた気もしたお芝居。


一言で言うと、すごく良かった!


拍手し続ける男2の気分、

と書けば、観た方には伝わるだろうか 笑


1時間の中でここまで濃密なお芝居もすごいなと思う。あっという間でもあるし、すごく長い時を過ごした気もした。


最初(コンクールの初日)に観た印象は、とにかく‘‘直球‘!

いろいろな意味で、バカが付くくらい(すみません😅)ど真ん中、全力投球勝負!に思えて、お芝居に引き込まれて鳩尾辺りが苦しくなるのと同時に、コンクールに挑んでいる陽永さん、ぽこぽこクラブの面々そのものにも泣かされそうになってしまった。


どうしても応援団的な気分になってしまい、審査員がチェックしそうなことを勝手に推測して観てしまった所もあるので、感想をまとめようと思うとどうも妙な目線の書き方になってしまう😅

一旦書いて、そのうち整理しよう。


まず、脚本がものすごく真っ直ぐ。

友情、優しさ、強さなどプラスな面だけでなく、嫉妬、自らの障害を受け入れることへの抵抗、八つ当たり等もとてもリアルに描かれる。その上で、それを指摘し正してくれる存在、それを受け入れる過程、さらに受け入れきれなかったのかも知れない部分などが、またとても素直に描かれていて、観ていて苦しくもなるが、最後は優しい温かな気持ちが残る。


そして、演出。(普段こんな感想は書かないと思う 笑)

これでもか!と次々と繰り出されるアナログとも言える直球な演劇的アイディアの数々。

観ていて、そこまで詰め込むか?と若干心配になったくらい😅

山岸さんの雰囲気とギター、歌の活かし方、リサイクルショップのあれこれが部屋の色々なモノになり、山になり、粗大ゴミ置き場になったりもする。ベッドは人形劇の舞台だし(大人しいナオちゃんが、ケンジに怒鳴られて雲まで?飛び上がってしまう所、密かにとても好きだった 笑)、スクリーンだし(これはオメガ東京のみ)。

石を投げるシーンやアカリちゃんのダイブシーンのクレッシェンド?は何度見てもつい吹き出してしまう。

いくつか出てくる相似な動作、シーンの重ね方もすごく効果的で上手いなぁと思った。

ナオキがいじめっ子達にからかわれるシーンと難聴の悪化に慄くケンジのシーン等、重なることで深みが増して見える。

なお、シライケイタさん作のお芝居での千葉哲也さん演出をどうしても使いたくてやったそうな 笑、冷蔵庫に頭を突っ込んで自分の情けなさを泣きながら告白するシーン、アカリちゃんの懐の深さも含めてとても良かった。



次、役者さん。

いや、役者さんの活かし方、演技も演出の1つになるのだろうけれども、それをしっかり豊かに体現する皆様、それぞれ本当に素敵だった。どのキャラも印象的、魅力的だった。


主演の一人、ナオキの山岸さん。

正直、初舞台の方をコンクール参加作品の主演に据えるってチャレンジャーだなぁ😅と思っていたけれど、びっくりするくらい自然に舞台に溶け込んでいた。

人前では固まってしまう緘黙症のナオキ、でもケンジと居る時は控え目ながら喜怒哀楽を見せ、歌い出すと見違えるように変わる。

山岸さんのジェントルな佇まい(アフタートークでは"上品"と表現されてた 笑)を活かしての当て書きだそうだけれど、それだけでないのは、楽日のカーテンコール、話の流れで突然、陽永さんが「やっぱり、お前の前で歌うのキツイよ!」と舞台の台詞を投げた際に、即座にしかもさり気なく受けて立って場を形成したのを見てわかった。恐れ入りました。

そして、ギターと歌の説得力が高いのは「もうひとつの地球の歩き方」で知ってから曲をスマホに入れてあるので既知である。ケンちゃんが愕然としたシーン(「愛してる」を歌ってる時)はホントに顔が違った 笑 

贅沢!


もうひとりの主演、ケンジの陽永さん。

もともと虚構の劇団の舞台から、見てはいけない内面まで吐露するような表情に引っ張られているのだけれど、今回のこれはもう・・・卑怯😅

引っ張られ過ぎてどうしようかと思った。

いじけてても元気な頃はただ追いかけていれば良かったけれど、耳のことが顕在化してきた頃はその表情を見てるのが辛すぎて、でも目は離せなくて、仕方ないので無理矢理演出に意識を飛ばして感心している、と言うような妙なことをしてしまった。

天使の輪っかみたいなのを付けてビョンビョンと振った後、天からナオキを促して笑顔を見せる所も素敵だが、照明が当たらなくなっていく中で、ナオキはもう大丈夫だなとでも言うように輪っかを無造作に外して脚立から降りる所もかなり好きだった。


そのケンちゃんの隣でしっかりと支え、励まし、叱ってもくれて、かつ可愛いと言う魅力的過ぎるアカリちゃんの都倉さん。

本当に素敵だった!

委員長タイプの中学生の頃、鈍いケンちゃんに見つめられて固まる表情と切り換え方、ダイブするお茶目さ。

ナオキを傷つけたことを悔やみつつ、一人歌詞ノートを読み出し、やがて歌い出すケンジに徐々に寄り添い、最後に抱き締めるシーン、泣かされた。

もっとも、このシーンは幾つかバージョンがあったようで、歌詞ノートを手にしたケンちゃんが淡く微笑みながらアカリちゃんを見て、すぐに二人寄り添って歌詞を読み出すバージョンも切なさと優しさがごっちゃになって良かった。個人的には先の意地っ張りケンちゃんバージョンの方がしっくりくるけど。

ケンジが亡くなってから訪れたナオキとのやり取りもとても良い。押し付けず引き過ぎず、絶妙。いやー、都倉さん、素敵だ〜。


もう一人、さり気ない気丈さがとても魅力的だったのがナオキのお母さん、サカモンさん。

本当は様々に悩み苦しんでもいたのだろうけれど、さり気なくナオキとケンジに接する様、一直線なケンジにあくまでも穏やかに笑顔で対する姿、激昂するケンジを見送った後の姿から滲み出て見える気がした想いに何とも言えない気分になった。

そして、サカモンさん、リサイクルショップの耳の聞こえない店員さんも素敵だった。裏表のない素直さが、ラストの奇跡を当然に見せてる気がする。

その他、不良、ラッパー、歌の先生、どれも生き生きして素敵だった。黒衣?もね 笑


で、リサイクルショップの謎の?店長、べーさん。

ぶっきらぼうで横暴な物言いをしていても店員君を可愛がっている気がするし、つい、何か隠されたものを持っていそうな気もしてしまう  笑 店長さんと店員君の関係性にも興味を引かれる。

典型的な不良、クソ真面目な生徒会長(彼の提案は好意的だったと思うけどなぁ😅)、隣のご婦人、ラッパー、医師など流石の切り換え方。楽しかった。

黒衣?の数々もお見事で、雲まで飛び上がるナオちゃんを動かしてたのもべーさん 笑

楽日の髪型で遊んでみたりするところも素敵 笑



この店長と店員君がいるリサイクルショップの色々なモノに纏わるお話をシリーズ化したら面白そう、なんてことも思ってしまった。



さて、最後にちらっと


温かい気持ちが残ると書いたけれど、捻くれている私は若干苦味も感じる。


音楽の道を進むナオキを天から見守るケンジ。

それは優しい世界。


でも、ケンジが去ってナオキが人と話せるようになったのは、ケンジが後で悔やんだキツイ言葉がきっかけかも知れない。ケンジがいたら甘えていた。いや、無意識にケンジに遠慮していたのかも?なんてことも思う。


ケンジは、結局、自分の障害をきちんと受け入れる前に事故で亡くなってしまった。

ケンジのナオキへの友情に嘘はないと思うけれど、そこに立場の逆転と言う発想はあったのだろうか?


なんてことが浮かぶくらい、物凄くリアルに自然に表現してくださってしまうので、常々自分の中の美しくない感情と戦っている私なんぞは勝手に苦味も感じるのであった😅



(あらすじ)

店長と耳の聞こえない店員がわちゃわちゃと?働くリサイクルショップを訪れた青年が、店員のギターを借りて歌い出す。


緘黙症のナオキは、中学時代、幼馴染のケンジから貰ったギターを軽々と弾きこなすようになる。ケンジは、もう一人の幼馴染アカリをマネージャーに引き入れ、ナオキと共にバンド:ニューノイズを結成する。

「ナオキの才能は神様からの贈り物だ。」と言うケンジに、ナオキは「僕にとっての神様はケンちゃんかな。」


ナオキの母親は、特殊学級に通うナオキに障害者手帳を取り、特別支援学校に行かせようと考えていることをケンジに伝えるが、ケンジは「ナオキを障害者扱いするな!」と叫んで飛び出してしまう。

明け方、ナオキを誘い出して朝日を見に行ったケンジ

「俺は神様じゃない。俺達は相棒だ。」


ナオキと一緒に通学するため定時制高校を選び、夜はクラブでバイトしながら、高校卒業後もバンド活動を続けていたケンジは、ある日、ギターだけでなく、歌も作曲も自分よりはるかに上であるナオキの姿を見て落ち込むが、自分の彼女になっているアカリに叱咤され、またナオキの元に戻る。


そんな中、ケンジは、以前から聞こえ難いことがあった耳がさらに聞こえなくなっていることに気づく。突発性難聴で右耳は殆ど聞こえず、左耳もかなり聴力が落ちており聴覚を失う恐れがある。障害者手帳を取得するようにと勧められる。


補聴器を選ぶアカリに当たり散らしたりしたケンジは、ナオキにニューノイズ解散を告げる。

驚いて理由を尋ねるナオキに

「お前の障害はその気になれば治る。俺と一緒にいるから甘えてる。俺は神様なんかじゃない。」


「何故、そんなひどいことを言ったの」

とアカリに問われたケンジは

「わからない。(自分の障害のことは)どうしても言えなかった。俺、最低だな。」


やがて歌詞を書き溜めたノートを手に取り、読み出すケンジ。


ナオキはギターを粗大ゴミ置き場に捨てようとして、引き返してギターを弾き出す。


二人で作った歌を二人が別々な場所で歌い出す。

ケンジにアカリが寄り添い、泣き崩れるケンジを抱き締める。


ナオキはギターを置いて立ち去る。



しばらく後、一対一なら話せるようになったナオキがアカリの元を訪れる。音楽はやっていない。

アカリはケンジの歌詞ノートと障害者手帳を見せる。

驚くナオキに、アカリは「これがニューノイズ解散の本当の理由。」


事故で亡くなったケンジ。

補聴器は着けていなかった。


アカリがケンジの言葉を伝える。

「もう一度ナオちゃんの歌が聞きたいって。神様になってナオキを見ててやるって。」


ナオキにケンジの声が聞こえる。

ケンジはナオキを促す。


「わかったよ。ケンちゃんが見ててくれるなら、僕、歌ってみるよ。」



見てないで降りてきてよ。

見てないで降りてこいよ。


青年が歌い終わると、店員が猛烈に拍手する。

「良かった!すごく良かった!」


店長は「わかんのかよ。」と呆れつつ、青年に名前を聞く。

「ニューノイズ。バンド名です。」


「ギター、拾ってくれてありがとう。」

とナオキが去った後、店員が歌い出す。


見てないで降りてきてよ。


「良い歌だったな。」と店長。


見てないで降りてこいよ。


ん?

| | コメント (0)

SHELTER(ネタバレあり)

ぽこぽこクラブ vol.7
オメガ東京

11/5夜,  11/15昼他 観劇

作:杉浦一輝 +三上陽永
演出:三上陽永

キャスト:
橘 雅彦(父親):森田ガンツ(猫のホテル/なかないで、毒きのこちゃん)
橘 清美(母親):大沼百合子(J.CLIP)
橘 賢一(長男):渡辺芳博(ぽこぽこクラブ)
橘 千佳子(長女):糸原舞
橘 達治(次男):高橋玄太(ぽこぽこクラブ)
橘 幹雄(三男):近藤茶
橘 有紀乃(次女):菅野恵(Moratorium Pants)

小山田 良(清美の彼氏、お笑い芸人):坂本健(ぽこぽこクラブ)
橘 沙耶香(幹雄の妻):磯部莉菜子(エンバシイ)
宮益 裕太郎(有紀乃の幼馴染)(Wキャスト):杉浦一輝(ぽこぽこクラブ)/三上陽永(ぽこぽこクラブ)

 

良かった。泣かされた。
同時にかなり苦さも感じた。


思い切り、家族の話。
時は今、まさにコロナ禍での、どこにでも有りそうな家族のすれ違いと再生。


なんてまとめてしまうとなんだか薄っぺらい感じになってしまうけれど、観た人がそれぞれに家族や身近な誰かを思い浮かべてしまうのではないかと思える良いお芝居だった。
役者さんもとても自然に役に溶け込んでいるので、引き込まれて身に詰まされた。


もしかしたら、観た人毎に見えたもの、感じるものが異なるお芝居だったかも知れないとも思う。
同じ言葉を聞いても、受け止め方は人によって違うだろうし、シチュエーションでも違うだろう。
私自身、家族との関わり方があまり上手くない。
自分や実家の家族を思い浮かべてしまい、勝手に重ねたり比較したりして苦い思いをしたのであるが、これは私に見えた風景に過ぎないやね。
感想を書こうと思ってなんか書き難いと感じたのは、結局、自分の家族への考え方がベースになってしまうので、そしてそれがまともであるという自信がないからである(^^;


でも、言葉を作ったくせにそれを上手く使いこなせない人間というのはシェイクスピアの頃からそんなに変わらないのだろう、なんて古典に逃げてみたり 笑
テレパシーという超能力が発想されたのは、やはり人間関係の構築に誰もが苦労しているからなのではと想像したりする。
わかってもらいたい、でも本音を知られたくない。面倒な生き物だ。とSFにも逃げてみる 笑


まあ、書こう。(また、むやみにとりとめなく長い…)


取り立てて悪い所があった訳ではない。
ただ、家族と言う近しい人への関わり方があまり上手くない不器用なお父さんと、その遺伝子をしっかり受け継いでしまった兄弟姉妹が5人もいれば、あんな風にもなるかと思う。
家族であるという油断なのか、あまりに遠慮のない物言い、決めつけに気持ちがざらついたりもした。
そのくせ、ちゃんと反省するやたら素直な所も受け継いでいる。
きっかけさえあればもっと早く修復されていたのでは?と思うとさらに切なくもなる。

それから、意地っ張り、強がりなのは実はお母さん譲りなのでは?と思ったりもする。
お父さんの遺骨が届いた夜、家族の亀裂が一気に表出した際にじっと耐えているお母さんのお顔は観ていると苦しくなったが美しくもあった。
ここにも不器用な人がいる、とも思った。


不器用で意地っ張りだとなかなか人に弱みは見せられまい。
さらに小さい頃からお兄ちゃんで家族皆から信頼されていると言う自負があれば尚更で、だから賢一さんは一人で頑張り続けて折れてしまったのかも、なんて思った。
(もっとも賢一さんがどうしてそうなったかの説明は一切ないので想像が広がり過ぎて妙なところに行きついたりもするのだが、それは後で書く笑)


一方、外から新たな絆を形成して関わってくる3人がそれぞれに直球勝負で、その、橘家とは異なるベクトルのエネルギーがとても輝いていて素敵だった。
それらが橘家の停滞を打ち破る力の一つになっているのも良かった。


良ちゃんのご両親へのご挨拶のシーンはどちらも泣かされた。また、聞いているご家族の困惑した反応が絶妙で可笑しい。
サカモン、今回も純粋で可愛くて素敵だった。
千佳子さんも良ちゃん相手だととても可愛い。糸原さん、甘えた顔と照れ隠しのきつい物言いの対比が素敵だった。
良ちゃんがお父さんの遺骨にご挨拶している時に、お父さん(の霊…のようなもの)は後ろのテーブルに座っているのだが、時々、千佳子さんの表情を見ているのも印象的だった。千佳子さんが本当に望んでいるのかを見極めようとしていたのかな。
森田ガンツさん、絶対良いお父さんだと思うのに、子供への対し方が本当に不器用そうで観ていて苦笑してしまった。


沙耶香さんの真っ直ぐな強さもとても眩しかった。莉菜子さん、あの突拍子のない姿でも成立して見えるから恐ろしい 笑
あの率直さで、お父さんのことがなくても橘実家に乗り込んできて、幹雄さんとのことは結局解決できたのではなかろうかと思える。 
どもりながら反論する幹雄さんの姿もすごく自然で、近藤さん、子供の頃も可愛いし、良かった。
仕事が自分の役割だからという言い訳辺りが、お父さんに一番似ているという根拠ではなかろうかと思う。


裕ちゃんはダブルキャストでかなりキャラが異なった。それに応じて有紀乃さんも少し変わるので、両方観て良かった。

一輝さんの裕ちゃんは、内気でおとなしくて誠実な感じ。あのふわっとした優しい雰囲気、一輝さん、はまってた。
有紀乃さんは、裕ちゃんを頼ると言うよりは癒しを求めているように見えて、ちょっとその・・・例えると大好きな大型犬を抱きしめているような感じがしなくもなかった(^^;
だから、実はラスト、東京への就職の話は裕ちゃんに何の相談もせずに決めたように思えてしまい、賢一さんとのやり取りで泣かされている気持ちの片隅で微かに苦味も感じていた。
そういうところが家族のズレを産む要因なのでは・・・と勝手に思ったりしてしまった。

一方、陽永さんの裕ちゃんは、じゃれ合ってやんちゃ小僧な面影はあるけれど、有紀乃さん、根底では裕ちゃんを頼りにして甘えている気がした。
何を言っても受け止めて貰えるという安心感があるからか、有紀乃さん、かなり活発な印象になっていたし。
だから就職の件も東京を受けることは話していて、内定をもらったことをまだ伝えていないだけ、と思えて素直に泣けた。

これだけ異なる裕ちゃん相手にどちらにもとても合っていた菅野さん、素敵だった。
あの背中のシーン、裕ちゃんの方はこれで良かったのかなとちと自問自答しているようなところもあったけれど(真面目なんだね)、ここでの有紀乃さんはとても生き生きとして可愛らしく魅力的だった。

菅野さんが二人の裕ちゃんを「花より男子」の道明寺司と花沢類に例えていたが、私は見たことも読んだこともないのでよくわからない。
(ドラマで松本潤さんと小栗旬さんがやってたのはかろうじて知っている)
では私が例えるなら何だろ?と思った時に浮かんだのが「花咲ける青少年」の倣立人(ファン・リーレン)とムスターファ(ユージィンではない方)笑
初日の一輝さんの印象は、ハイジのヨーゼフとか名犬ジョリィだったりしたのだが(すみません(^^;)、楽日を見たらやはりムスターファかなと思った。(やはり意味不明だな、すみません 笑)
あくまでも個人の感想ですので、悪しからず~。

個人的には陽永さんのツンデレな裕ちゃんがかなりツボで、観ていてクラクラしてしまった。

 

役者さん、皆様、それぞれのキャラにしっくりはまっていて魅力的だった。

森田さんのお父さん、すでに書いたけれど本当に不器用で、でもおずおずと千佳子さんにお酒を勧めて、受け入れて貰えるとすごく嬉しそうなのがわかる。
閉じ籠った賢一さんの返事が初めて聞けた時の、飛び付くように近寄っていく姿にも泣かされた。

大沼さんのお母さん、可愛いし強い。良ちゃんのことも大らかに受け止め、ノリの良さも素敵だった。
冒頭のお父さんとのやり取り、可笑しかった。それが後で千佳子さんと繰り返されるのも面白かった。
お父さんと子供達の軋みもしっかり見つめていたのだろうと思うけれど、解決するまでは器用ではなかったのだろうな。


糸原さんの千佳子さん、これもすでに書いたように良ちゃんの前ではとても素直で可愛い。
お母さんに「素直で不器用。」と言われていて、あの豪快なくらいの勢いは魅力的だと思う。
ただし、個人的にはちょっと引っかかるところもあった。
有紀乃さんがふいにコンビニに行ってしまった理由、達治さんが「俺かな。」と言ったせいもあるけれど、自分にも非があるとは最後まで認めなかった。橘家の家族についての有紀乃さんの話も途中で遮り、自分の話に持って行ってしまった。
時々、かなり無遠慮と言うか不用意な物言いをして、それを回収しないところは観ていて勝手に感覚を引っかかれていた。
それも含めて千佳子さんだと思うので、糸原さんは素敵でした、念のため(^^;

玄太さんの達治さんは、コロナ禍で収入を断たれて実家に戻ってきた小劇場の役者さんって、すごい設定…
高校時代?の伸び伸びした雰囲気、一転して行き詰ってきた頃?のゲームをやっている目付き、表情は恐ろしいくらいで、玄太さん凄いな、と感心してしまった。
謝罪すると決めてからの素直さも良かった。

近藤さんの幹雄さん、学会とか言っていたから何か研究職なのかな?
おずおずとしたところや、それなりにフォローしようとするところも確かにお父さんに似てた 笑
沙耶香さんに問い詰められて言葉がうまく出てこないところ(+ハッピーな報告するところのグダグダ感も)毎回すごく自然にああなので感心してしまった 笑
子供時代、賢一さんに抱えられてる姿も可愛かった 笑


菅野さんの有紀乃さん、賢一さんへの父親、兄、姉の対応に失望してしまい、自分でも動けなくなっていたのかなと思う。
家での硬い表情、裕ちゃんとの時に見せる柔らかな表情、ラスト、賢一さんに話しかける時のキラキラした笑顔、と書いていたらまた泣かされそうになった。
裕ちゃんに対してはちゃんと向き合ってあげてね、と思う。特に一輝さんの裕ちゃんの方には。
陽永さんの裕ちゃんは必要な時は彼からしっかり向かっていきそうだけど、一輝さんの裕ちゃんは見守りながらいざとなると自ら引いてしまいそうな気もするので。

サカモンさんの良ちゃんは、もうずるいレベルで真っすぐで素敵な人。
遺骨を前に「ネタをやって。」と言われて「ハードル高くないですか?」と言いつつ、きちんとやるあたり、ボロ泣きさせられた。
それを見てニコニコしているお父さんも目に入るし。

磯部さんの沙耶香さんも率直で素敵だった。「馬鹿だから。」と繰り返していたけれど、理屈じゃないその発想と行動力に幹雄さんは惹かれたのでは?と思うぞ。
大人な役の莉菜子さん、新鮮だった。

裕ちゃんの一輝さんと陽永さんについてはすでに書いてるので割愛 笑
お二人ともそれぞれに魅力的だった。


さて、べーさんの賢一さん。7年前から閉まった扉の向こうに閉じ籠っている。
ほとんど見えないのだけれど、その存在感、お父さんの言葉にだんだん反応していく雰囲気、さすがだと思った。
一度、お顔も見える席に座った時はさらに引き寄せられて泣かされた。
亡くなったお父さんが歩いていくあとから、ほぼ同じ歩き方で出てくる姿、そして回想シーンでの明るい笑顔、家族をまとめる包容力。
やがて動けなくなった背中。
お父さんも賢一さんも最後の台詞は「ありがとう。」なのだよね。


照明、効果音も含めて、演出にも引き寄せられた。
千佳子さんが良ちゃんに、幹雄さんが沙耶香さんに電話するシーン、同じようなやり取りなのに意味合いが全然異なる割り台詞のようになっていて印象的だった。
そうそう、このシーンの前、照明だけで時間の変化を示すところも素敵だった。
シーンが切り替わるところで、画面の砂嵐のような、巻き戻しのような音がするのも面白かった。

ラストの音も印象的。閉じこもっていた殻、shelterではなくてshellを打ち破ろうとする音なのかも、などと想像した。

 


さて、勝手に連想コーナー 笑

有紀乃さんがお母さんに「(賢一さんのことを)お母さんはあんなに心配していたのに、お父さんは何もしなかった。」というのを聞いた時にふと思い出したこと。


劇団チョコレートケーキの「60's エレジー」で、集団就職で林畳店に就職して以来、林ご夫妻に子供のように可愛がってもらっていた修三さんが、畳屋が立ち行かなくなり東京を離れる時に、社長の清さんに一緒に来るように強く誘われなかったことで突き放されたように感じた、と独白していた。
清さんは、頑張って働きながら大学にも入り、信念を持って学生運動にも傾倒している修三さんの未来と自主性を重んじて強くは誘わなかったのだけれど。
一方、奥さんの悦子さんは心配して何度も「一緒に来ない?」と誘っていた。
(結局、修三さんは自分の意志で東京に残ることを選ぶ。)


賢一さんに対して、ご両親もこの二人のような関わり方があったのではなかろうか、と勝手に想像してしまった。
そうすると、最初は会社内でのストレスでそうなったのかと思った賢一さんは、何か社会運動的なことをしていて挫折したのかも?と思ってしまったりした。その方が元気なころの賢一さんを考えると繋がり易い。

そして再度、頑張るということはまたそういうことに向かい合うのか?なんてことを考えて、あの音が閉塞した世界を打ち崩そうとする音にも聞こえてきた。
「世界と戦う準備はできてるか」でのべーさんの役も被ってきて、世界がクロスオーバーしてしまった…

 


(あらすじ)
両親と末っ子の有紀乃、そして7年前から部屋に閉じ籠ったままの賢一が暮らす橘家。

コロナ禍の中、5年間帰ってこなかった長女の千佳子が突然帰省すると連絡を寄越し、さらに次男の達治、三男の幹雄も同じ日に偶然戻ってきた。
コロナ影響で内定取り消しのニュースに「お前も気をつけろよ。」と言う幹雄、「東京は甘くないから。」と言う達治、そして就職祝いを渡しながら「あいつみたいになっちゃダメだよ。」という千佳子の言葉に有紀乃は家を飛び出していってしまう。
夜、水を飲みに来た千佳子は、一人で酒を飲んでいた父:雅彦に誘われ一緒に酒を飲みながら「結婚したい人がいる。」と打ち明けた。
次の朝、雅彦は38.4℃の熱を出し、救急搬送されてしまう。コロナ感染だった。全員が自宅待機になった。

幼馴染の裕太郎の部屋に転がり込んでいた有紀乃は帰宅することを拒否し、裕太郎に頼み込んで彼の部屋で待機することにした。
7年前、自殺を図った賢一に対する家族の対応を見て以来、有紀乃は父や兄姉に対して頑なになっていた。

PCR検査の結果は全員陰性。東京に戻ろうとした千佳子を訪ねて、千佳子の彼:良がやってくる。
お笑い芸人だという良は、いきなり土下座して千佳子が妊娠していることを告げ、「結婚させてください。」と頭を下げる。
皆が唖然としているところに、今度は幹雄の妻:沙耶香が防護服を着てやってくる。
さらに唖然しながら、母:清美は「にぎやかねぇ」と微笑む。

良のお笑いに清美がやたらに受けたり、PCR検査の結果が出るまで防護服を脱がないという沙耶香に戸惑いつつ、それなりに和やかに過ごす橘家。

有紀乃が裕太郎と気持ちを確かめ合った頃、清美からメールが来る。
裕太郎が読んでしばし絶句する。「お父さん、亡くなったって。」

過去の記憶。
千佳子の成人式、達治と幹雄の喧嘩、いつも笑顔で皆をまとめてきた賢一。
その賢一が自殺を図って迎えに行く母親。父もいたはずなのに、父は新聞の後ろ、姿は見えない。


対面も出来ずに火葬された雅彦の遺骨が届き、悲しむ千佳子の言葉に有紀乃が「今更、何を家族ぶっているの?」と突っかかったのがきっかけで、抱えていた問題が表出する。
千佳子が帰省しなくなったのは、5年前の祖母の葬儀の際に達治が香典3万円を盗んだのを目撃し、両親に相談したのに、父はやっていないという達治の言葉を取って、金を埋め合わせすることを選んだからだった。
幹雄は「沙耶香との離婚を告げに来た。」と言おうとしたが、その前に沙耶香が叫ぶ。「私達、ずっとセックスレスなんです!」
沙耶香は「私を見て!」と迫り、戸惑う幹雄を残して飛び出していく。

一人残され、やがて涙を払って歌いながら片づける清美。
雅彦の遺骨を前に、雅彦のウィスキーを飲みながらスクラップブックを眺めているところに千佳子がやってくる。

達治を追い込んだことを謝る千佳子に、清美は「貴女は素直なだけ。そして不器用。」と笑う。
千佳子はスクラップブックを読み出す。
そこへ幹雄もやってくる。清美に「貴方はお父さんに一番似ている。」と言われて考え込む幹雄。
達治がやってきてトイレに入っているところに、有紀乃も来てテーブルで待つ。
出てきた達治は両親と千佳子に謝り「今はこれだけしかないけど。」と2万8千円を差し出す。

スクラップブックを読み続けていた千佳子は、別なスクラップブックも出してきて読み続ける。
不審に思って読み出した幹雄が声を上げる。「これ、俺達のことだよね?」


賢一のことがあってから子供達との向き合い方を考え始めた雅彦は、子供に関する様々なことを切り抜き、メモを書いていた。
ちゃんと叱れなかった達治のこと、失望させた千佳子のこと、達治の舞台、幹雄の好きなアニメ、有紀乃の好きな韓国アーティスト…
賢一にもドア越しに声をかけるようにしていた。
しばらくは返事がなかった賢一から初めて声を聴けた時の嬉しさ。
会話が続くようになったのに自殺未遂の原因を聞いてしまい、また振り出しに戻ったこと。
でも、倒れる前日、千佳子と初めて一緒に酒を飲み、結婚の話を聞けて嬉しかったこと。さらに久しぶりに賢一の声が聞けたこと。
「お前も不器用だったんだな。」
「お父さんの子だからね。」
「ありがとう。」


突然、有紀乃がスクラップブックを投げ付ける。
「最悪だよ、私。死ぬなんて思わないじゃん。」
清美が有紀乃を抱きしめる。
兄、姉が声をかける。

「お父さん、やっと家族が揃ったね。」


9ヵ月後、清美が掃除機をかけ、お腹の大きな千佳子がテレビを見ているところに、買い出しに行っていた有紀乃、裕太郎、達治、良がにぎやかに話しながら帰ってくる。
そこへ幹雄夫妻もやってきて「赤ちゃんが出来ました!」

有紀乃が賢一に報告に行く。あれから賢一からの返事はないが、ずっと誰かが話しかけてきた。
皆が来たこと、そして自分の東京への就職が決まったことを告げて、有紀乃が「また後でね。」と行きかけた時、賢一の声がした。
「就職、おめでとう。コロナなんかに負けるな。」
「俺も頑張るから。」
「有紀乃、ありがとう。」

| | コメント (0)

どんとゆけ(ネタバレあり)

【主催】渡辺源四郎商店 なべげんわーく合同会社


2020年1月18日,19日観劇(渡辺源四郎商店しんまち本店2階稽古場)
2020年1月26日観劇(こまばアゴラ劇場)


作・演出:畑澤聖悟

キャスト:
青木しの(1年前、栗田和哉と獄中結婚):小川ひかる
北林鋼太郎(青森拘置所の保安課長):三上陽永(虚構の劇団、ぽこぽこクラブ)
栗田(青木)和哉(死刑囚):工藤和嵯
大崎一郎(殺された大崎繁之の父, 息子と孫二人を栗田和哉に殺された):田中耕一(劇団雪の会)
大崎咲子(殺された大崎繁之の妻, 夫と息子二人を栗田和哉に殺された):木村知子
権藤明(咲子が勤めるスーパーの店長):佐藤宏之 

 

1月に観た際に感想を書こうとして書けなかったので、DVDを購入して観返した今、書いている。

いやぁ、改めて観ても凄いお芝居だと思う・・・
観る人によって受け取るものがかなり異なるような気がするし、いろいろなことを考えてしまう。
観ていると気分も頭もごちゃごちゃになってくるので、感想もまとまらない・・・


死刑員制度という先進的なのか逆行しているのかよくわからない制度。(勿論、架空の制度)

当該被害者の遺族が死刑を執行する。遺族がその権利を放棄すれば死刑は自動的に無期懲役に変わる。


それが青森という土地で青森弁で語られる。
これもかなりポイントになっていると思う。その地に残る人の魂、想いが容易に感じ取れる場。

私はなべげんの稽古場で最初に観たので、映像を観ていてもあの独特の異様な雰囲気を思い出す。

あの家鳴り・・・

アゴラでは外の電車の音なども聞こえてまた異なる効果もあったと思うけれど、青森のあの稽古場で聞こえてきた音。
最初は単なる軋み?とさして気に留めなかったが、次に聞こえてきて、違う!これは・・・

ぞっとした。

音と照明、そして役者さんの仕草、表情で滲み出してくる、この家に纏わりついている何か。
人の魂、想い? 怨念?・・・ではなさそうだけれどどことなく禍々しさも漂う。

それをさも愛おしそうに見渡すしのさん。
(実はここでは、既に2人、死刑執行されている。)

怖かった・・・
あの稽古場で観て良かった。


そして、それぞれに強烈な印象を放つ登場人物達。
皆、どこか傾いで見える。

メイド喫茶ですか??な装いで、人目も憚らず和哉さんに色っぽい言動を投げかけるしのさん。
お年寄りの見守り訪問してる民生委員さん?のような明るさと笑顔で、時に恐ろしいほど遺族や和哉さんの気持ちに無頓着にも見える北林さん。
終始おどおどしている気弱な青年に見えるが「なんで死ななきゃならないんですか!」と正面から言われると、いや、だって君・・・と思ってしまう和哉さん。
和哉さんを人として見始めていて迷いも見えるようだが、執行をやめようとは決して口にしない一郎さん。
ギリギリと音がしそうな緊迫感と怒りのパワーに圧倒されるが、それでいて付き合っていた権藤さんにこの場所を教えていたりもした咲子さん。
多分とても普通な人なのだろうが、あの場では良し悪しとかではなくただただ場違いに思えた権藤さん。

 

どの役者さんも観ていて苦しくなるくらい真に迫って感じられた。

どのキャラに沿って観るかでまた随分印象が変わるような気もした。


殺害した3人の写真を目の前に並べられて、オムライスを途中から一気に食べ切る和哉さんの姿。
刺すように睨み付けている咲子さん、にこにこ眺めているしのさん、なんとも表現し難い気分になった。

ゴニンカンゲームの時は一郎さんは明らかに楽しそうだし、もちろんしのさんは和哉さんと一緒で楽しそう、和哉さんもちらっと笑顔になる。
一人だけ当事者ではない北林さんはちと浮いているけれど、まあまあそつなく溶け込んでいる。
そんな雰囲気の中で、咲子さんは必死に怒りの感情を離さないように自らに強いているようにも見えた。
和哉さんが笑顔になるこの一瞬、ちょっとだけ疑似家族的な温もりが感じられて好きだったが、すぐに物凄い勢いでぶち壊される。

 

和哉さんの手紙を読んで迷いも見える一郎さんも、執行を止めるとは言わない。
咲子さんと二人だったからかも。お互いに決意を支え合って(しまって)止めなかった。
どちらが良いとか軽々しく判断出来ないけれど、どちらか一人だったら執行を止めたのかも知れない。


いや、でも、しのさんがいる、か。
彼女が若干けしかけているようなところも感じた。
しのさんは和哉さんが死刑になることを望んでいる。”死刑になる和哉さん”を愛している、のだと思えた。

しのさんの言動はこのお芝居だけを観た時はひたすら謎だった。

でも、これの前日譚として合わせて上演された「だけど涙が出ちゃう」と観たら、少しわかるような気がした。
ただし、これは今回新たに工藤千夏さんが書かれたものなので、同じしのさんと考えるか、パラレルワールドのしのさんと考えるかは観客の自由。
私は同じ世界として観て、過去に淡々と自らの処刑に臨んだ男性に囚われてしまったしのさんが、その一種清廉にすら思える面影を求めて次々と死刑囚との関係を持っているように思えた。

しのさんの「被害者様ってのはそんなにエライものなんでしょうかねぇ。」というのも、何だろう、この人、と思ったが、「だけど涙が出ちゃう」を観たら、彼女からそういう言葉が出るのもちょっとわかるような気もした。
とは言え、これはここでの被害者遺族達には全く関係ないことで、煽られているような気もするだろう・・・


んー、いや、もしかしたらこの家に宿っている何かが彼女をそうさせているのかも知れない。

この家で執行することになったのは和哉さんが望んだからだろうが、それはしのさんが提案した気がする。
もし、しのさんがこの家の何かに囚われ、操られているのだとすれば、それらがここでの執行を望んでいた。
そして、それらが一郎さんや咲子さんの気が変わること(死刑執行を放棄すること)を邪魔していたのかも知れない。
そう思って観るとそんな風にも見える・・・

・・・どうも私は怪奇な歪んだ考え方に惹かれる(^^;

 

私は陽永さんが第一目的だったので、どうしても北林さんの言動に意識が行き、彼の言動の理由を考えながら観ていることも多かった。

基本的に良い人そうなのだが、陽永さんファンの目から見ても、この人の言動には時々ぎょっとさせられた(^^;
「規則ですから。」はいかにも融通が利かない公務員らしくて苦笑するくらいだったが、例えば、当人が聞こえる状態で遺体の運び出しや臓器の話をするか、普通??
何故にそうなのか?と観ながら考えてしまっていた。

彼の言動を理解しようと思うと、死刑員制度が出てくる。

死刑員制度の是非を考え出すと収拾がつかなくなるが、死刑制度は廃止される国が多くなっていたはず。
そんな中で死刑制度を続けるに当たって、死刑判決が出ても執行は遺族に一任されるというのは理に適っているのかもと思ったりした。

人の命を奪うという行為は人間の本能として拒否反応が出ると思うけれど、それを仕事として行わなければならない人がいる。
きついだろう。

それを自らが背負う覚悟を持って遺族が死刑を望むのであれば、それは今の状態よりは合理的なような気がしなくもない・・・かぁ?
彼らが執行したということは周りの方々にも知られることになるだろうし、権藤さんのようにそれに拒絶反応を示す人もいるだろう。
大切な人を失った上に自らも精神的な重荷を背負う、というのは酷過ぎるよな・・・

とは言え、全く関係ない刑務官が仕事としてその重荷を背負うというのもやはり酷いと思う・・・

実はつい先日(2020年5月6日)オンラインzoom演劇という形で「12人の優しい日本人」を観た。
当時日本ではまだ成立していなかった陪審員制度があったらという仮定で書かれた本なのだが、その中で一人、以前にも陪審員をやった方がいて、その時の被告人が有罪となり死刑になったという経験からとにかく無罪を主張する。

北林さんが心情を吐露するところでこの方のことが頭をかすめた。
まだ死刑員制度が出来ていなかった頃、刑務官として死刑を執行していた。
「どん!」という音。 
慣れるようなものではないだろうし、それをやりたくて刑務官になった訳でもないだろう。
生まれる子供への影響は昔話等でよく出てくる話だし、自分への非難は聞き流せても子供に及ぶと反射的に激高してしまう北林さんの心情を思うととても痛かった。

だからこうなった今は規則を盾に、極力、全てを遺族にやらせる。

また、この制度そのものが遺族が死刑執行を止めたくなることを狙って、受刑者の最後の願いや食事に遺族を立ち合せるのでは?などと思いながら観ていた。


それから、北林さんにとってこれは仕事だ。
遺族にとっても受刑者にとってもこれはとてつもなく稀有な状況だろうが、北林さんはおそらく何度も経験している。
まあ、すでに課長の北林さん、通常の場所(刑場のある拘置所ですね)での立ち合いはもうやっていないと思うけれど、こういう特殊な場所での執行には立ち会わざるを得ないのだろう。
毎回毎回様々な人の想いが溢れていることだろうが、それにいちいち反応していたらやっていられない。
何度も繰り返すうちに無意識に感性のどこかのスイッチを切ってしまった結果、あんなお気楽な口をきいたり、献体の詳細を本人に聞こえるところで話してしまったりするのかもと思った。
それでも完全には切れないから喉が渇くのかもと思う。
それでいて、締めるところはしっかり締める。
あの家に纏わりつく何かも耐性が出来ている彼には触れない。術を使わない陰陽師みたいなものか?というのは想像し過ぎだとは思う(^^;

個人的には「(死刑囚が執行前にショックで死んでしまったら)誰が困るんですか?!」と咲子さんに聞かれて、即座に、パンフレットになんて書いてあるかと促してから「法務大臣ですよ。青森県知事じゃないんですよ。だからお願いします。」と答えるところが妙に好き。
彼の立場と諸々の心情を端的に示していた感じがする。


あれを標準語で東京という設定でやったらどうなるのだろう? 
それはそれで興味がある。

 

 

(あらすじ)
被害者遺族が死刑を執行するという死刑員制度が制定されてから10数年が過ぎた頃。

死刑囚青木和哉が、死刑執行のため、獄中結婚した青木しのの家に連れてこられる。
連れてきた保安課長北林の目も気にせず、しのは喜々として色っぽく和哉に話しかける。
やがて、死刑を執行する一郎と咲子がやってくる。
夫と幼い息子二人を殺された咲子は怒りを真っすぐに和哉にぶつける。

人当たりの良い北林が死刑員制度の説明を始める。
規則に細かく、受刑者への配慮を求める北林に咲子が怒り、それをしのが煽り、一郎が取り成す。

2階にある絞首刑の場の準備。

受刑者への最後の食事。彼の望みは被害者3人も大好物だったオムライス。
咲子が無言で並べた3人の写真を前に和哉はオムライスを一気に食べつくす。その姿を笑顔で眺めて世話をするしの。

受刑者の最後の望みはゴニンカンゲームをすること。
かつて家族とやった思い出のゲーム。
それなりに盛り上がり、和哉も笑顔を見せるが、和哉の罪のせいで崩壊した彼の家族の顛末を咲子がぶちまけて場が凍り付く。

受刑者が安らかな気持ちになれるよう読経もしくは讃美歌斉唱。
納得できない咲子はもめるうちに北林が子沢山であることを責めてしまう。
子供のことを言われた北林は激高する。気を落ち着かせてから語る。
この制度が始まるまでは死刑執行は刑務官の仕事だった。北林も執行している。子供が生まれる時に何か異常が出ないか怖かった。
でも、配偶者が妊娠している者、身内に不幸があった者は執行の命令を拒否できる・・・

歌が終わり、執行の場に行こうとするが和哉は動けない。

そこへチャイムが鳴る。
現れたのは咲子が密かに付き合っていた職場の店長:権藤。

権藤と咲子、一郎が一時席を外し、かかってきた電話で献体の話をしていた北林もトイレと言って消えた後、
和哉はしのに「逃がしてください。」と頼むが、しのは笑顔で拒否。
和哉からの手紙を読み上げ、彼の死に向かう覚悟に微笑んだしのは「すでに2人ここで死んでいる、大丈夫。」とうっとりと部屋を見回す。
そして彼女は和哉にキスをする。

戻ってきた咲子は、彼女が人を殺すことを嫌う権藤と別れたらしい。

皆が揃っていることを確認した北林が「どうしますか。やりますか?。」と再度聞く。

「やります。」

和哉はよろよろと立ち上がり、それをしのが支える。
北林が先導して、しのに支えられた和哉が続く。

「行きましょう。」足の悪い一郎を咲子が支えるようにして2階に上がる。

どん、と音がする。

| | コメント (0)

鶴かもしれない2020(ネタバレあり)

EPOCH MAN 

駅前劇場


1/10夜、1/13夕方?  観劇


作・演出・美術:小沢道成

音楽:岡田太郎(悪い芝居)


キャスト:小沢道成



小沢さんの一人芝居。

「鶴の恩返し」をベースにした現代劇で、再々演。


凄かった。

60分が、あっという間にも、60分しかなかったのか?とも思えた。


再演は観ていて、ラジカセ数台(3台かな)を使ってのやりとり等は前回同様なのだが、全体的な舞台としての印象がよりシャープに洗練され、独特の世界が部分的にはちと強烈過ぎるくらいに鮮やかに展開されて、なんだかひたすら圧倒された。


最初の方は、'美しい娘'を「三回言ったぞ? 笑」等のお茶目なやりとりや、どこまで行くんだ、それ?な料理のシーン等のような可笑しさや微笑ましさにかなり笑ってもいたが、話が進むにつれて見えてくる破綻の兆しにどんどん息苦しくなりながら固まって観ていた。


一人芝居なのに、相手の仕草や表情まで見える気がしてくるのはまだしも?、観た席の位置によってその相手の表情や仕草が少し違っているような気がして、また凄いなぁと思った。


鶴子さんの、その・・・「仕事」中のシーン、恐ろしく痛く切ないシーンなのだが、ものすごくキレイでもある。断続的な?照明の中で煌びやかに広がる衣装が、何故か純白の羽のように思えてギョッとしながら見とれた。

ラスト近くの羽を引き抜きながらの凄みのある機織りのシーンと繋がる。


前回観た時は、この先も似たようなことが繰り返されるであろう彼女の業のようなものを切なく感じたけれど、今回は、そんな彼女に手を差し伸べ、一旦は救う誰かがいる世界と言うものを司る何かの怖さ、みたいのものを何となく感じてしまった。


って、書いてて自分でも上手く説明出来てる気がしないけど😓



額縁つきの鏡を何枚も組み合わせような壁は、照明と音で夜の都会の街中にも、昔の雪野原にも見えた。さらに狭いアパートの一室、煌びやかで妖しげな店内、玄関や窓は当然ながら、引き出せば台所にもなったりと、セットの使い方もとても面白かった。

それから、衣装もとても凝っていて素敵だった。いつか展示会をまたやって欲しい。


あとは個人的な連想ゲーム 😅

最初に彼女がタニヤマさんを訪ねてくるシーン、安部公房さんの「友達」を思い出してしまい、正直、かなり引く。怖い・・・

何故にそんな簡単に受け入れてしまうんだ、タニヤマさん😓

そして、チェーホフの「かわいい女」

この小説の主人公オーレンカは愛する人(父、夫、子供など)の全てを自分のものとして受け入れる女性。愛する人無しには自分の意見も持てなくなる。

この小説の解釈は色々あって何が正しいという事ではないと思うけれど、私は「鶴かもしれない」を観るとこの小説が浮かぶ。観てから読み直してみたら、案の定、また違った読み方になったらしくて面白かった。


もう1つ、雪の中に一羽蹲る鶴のイメージから、最近観た「フランケンシュタイン」も浮かんだ。

こちらは復讐として北極に1人取り残されるのだが、元親友だった怪物の亡骸を抱えている。観ていて、こちらの気持ちの締め付けられ方が似てた。


最後、タニヤマさんが創った歌が「どん底」。

2019年、新国立劇場でやった「どん底」で花組芝居の谷山さんが男爵やってらして、内心、つい吹き出してました 笑



(あらすじ)

売れないミュージシャンの若者(タニヤマ)の部屋に美しい娘が突然訪ねてきて、泊めてくれと頼む。

娘は、以前、街中で泣いていた時に声をかけてくれた若者を見かけて、お礼がしたくて後をつけ、やってきたのだと言う。

嫁にしてくれとまで言う娘に、若者は戸惑いながらも、まずはお試しから、と一緒に暮らし始める。

娘は楽しそうに家事をし、二人は幸せに暮らしていたが、ある時、若者が路上パフォーマンスが盛んな米国に行ってみたいという夢を語る。

娘は一週間の仕事に出掛け、若者の服などたくさんの土産を持って戻る。

次に出掛けた時には米国行きのツアーのチケットを持って戻ってきた。

彼女の留守中に妙な男が訪ねてきたこともあり、さすがに不審に思った若者は、わざと欲しいものがあると告げて、娘が仕事に出掛けた後をつける。

娘は、鶴子と言う名前で、オーダーしてくれた客と外出し、交渉次第で何でもする店で働いていた。

若者は、理解出来ないと娘を責め、去った。

娘はここから抜けられない己を嘆く。

そこに「大丈夫ですか?」と声をかける1人の若者。

「大丈夫です。」

答えた娘はその若者の後ろ姿を見つめ続ける。

| | コメント (0)

義経千本桜(ネタバレあり)

花組芝居

2019/2020 あうるすぽっとタイアップ公演シリーズ

あうるすぽっと

12月13日公開ゲネプロ、13日夜、22日昼 他観劇


原作:竹田出雲 三好松洛 並木千柳

脚本・演出:加納幸和

キャスト:

銀平女房お柳実は内侍の局/すし屋娘お里(加納幸和)

左大臣藤原朝方/鮨屋弥左衛門 他(原川浩明)

川越太郎重頼/尼妙林/河連法眼 他(山下禎啓)

渡海屋銀平 実は 新中納言知盛/梶原平三景時/法橋坊 他(桂憲一)

卿の君/銀平娘お安 実は安徳天皇/鬼佐渡坊 他(大井靖彦)

逸見藤太/権太女房小せん/横川覚範実は能登守教経 他(北沢洋)

若葉の内侍/河連法眼の妻 飛鳥 他(横道毅)

六代君(嶋倉雷象)

武蔵坊弁慶/弥左衛門女房お米(秋葉陽司)

駿河次郎 他  (松原綾央)

亀井六郎 他  (磯村智彦)

相模五郎/いがみの権太 他(小林大介)

猪熊大之進/佐藤忠信実は源九郎狐/佐藤四郎兵衛忠信  (谷山知宏)

入江丹蔵/主馬小金吾/薬医坊 他(丸川敬之)

土佐坊正尊/弥助実は三位中将維盛 他(押田健史)

静御前/権太の息子 善太(永澤洋)

九郎判官源義経 他(武市佳久)



花組芝居の三大浄瑠璃 全段通し公演の最後。

「KANADEHON 忠臣蔵」は2007年、「菅原伝授手習鑑 ~天神さまの来た道~」は2012年、そして2019年に「義経千本桜」。

全段通したら普通は10時間はかかりそうな物語を休憩込みで3時間弱(2時間45分)で上演するこのシリーズ、全段が見事に納まっていることにもはや驚きはしないけれど(笑)、やはり感動する。しかも狐忠信のあれこれや碇知盛の能、鮨屋の文楽等への拘りよう、凄いと思う。

もっとも、私は歌舞伎その他で観たことがある「義経千本桜」は、狐忠信関連の所、渡海屋、すし屋辺りだけで全体の流れは知らなかったので橋本治さん/岡田嘉夫さんの絵本で予習して臨みました(^_^;)


冒頭は、壁半分を覆う桜と言えば桜だが見ようによっては血飛沫?が描かれた幕をバックに、壊れた能舞台のようなセット、泡が浮かんでは消えていくような音に取り巻かれて海の底に迷い込んだような気持ちになった所に雷鳴?、そして出てくる袴姿の虫?  蛍?  蟹??、と言うよりその昔のインベーダーゲーム?のようなお面と動きの物の怪?達がやがて踊りに変化して、それらが消えていくと共に現れる義経、弁慶、藤原朝方・・・


そこから先は、衣装と言い、台詞と言い、所作と言い、音楽、効果音も含めて基本的にはびっくりするくらいにまともに歌舞伎(文楽、能に近い部分も多かったと思うけれど、私はあまり知らないのでわからない)。

でも、そこにダンスだったり野球だったりラップだったり、絶妙に異質なものや可笑しみを交えて、言葉が全てわからなくても展開はわかり、各々のシーンで誰かに感情移入してしまうような入り込み易い舞台だったと思う。それを成立させる構成、演出、役者さん達。おそろしや 笑


そして、義経以外は全て幻のように歪んで消えていくようなラスト、一人取り残されて佇む義経に、冒頭と合わせて、今まで観たものは海に沈んだ亡霊達が過去に囚われて繰り返し演じている舞台なのか、兄に疎まれて破滅に向かう義経の心が生んだ妄想なのか、等と想像が膨らみ、しみじみと余韻が残った。

とは言え、これは中途半端に知っている😅私の捉え方。

義経千本桜を全く知らなくてもそれはそれで興味深い世界が感じられたと思うし、歌舞伎、文楽、能等、多くの知識のある方はより深く、色々な拘りやお遊び等にも気づくことが出来て、各々に楽しめたのではなかろうかと思う。


お話は「義経千本桜」そのままなのでとんでもない所はとんでもない。歌舞伎の話は忠義のためなら人の命は二束三文・・・😓


義経の話と言うよりは、落ち延びた平家の公達と彼らを取り巻く人々の物語、悲劇。

義経自身も逃げているのだが、まだ余裕がある時期の設定なので彼らに若干の救いの手を差し伸べる展開が多い。それが尚更ラストの無情感に繋がる気がした。


役者さん達はメインの役だけでなく、名前のある他の役、黒衣のような役、舞台裏でのフォローなど全員が八面六臂のご活躍、殺陣あり、踊りあり、アクロバティックな動きあり、さぞ大変だったことと思うけれど、皆様、楽日の役者紹介までとても楽しそうに見えて、観ているこちらも楽しかった。


ここからは役者さん。


義経役の武市さん、台詞の抑揚等はまだ不馴れな感じがちとしたけれど、回を追う毎に生き生きとされてきて、毅然とした姿だけでなく静御前をつい追いかけそうになる姿も育ちの良いお坊ちゃんらしくて素敵だった。


静御前の永澤さんは、まあ、綺麗、可愛い、お勇ましい。お声もたんとよろしくて、そりゃ、義経殿、惚れるでしょうよ、と思った 笑

善太君の時もとても活発で可愛くて、洋さんの綺麗で優しい小せんさん、大介さんの悪ぶっていても家族思いの権太さんと合わせて、とても良いご家族。だからこそ酷いと思う鮨屋の話(わかってるなら周りに無理させずに逃がしなさいよ、頼朝殿、と思う😥)


維盛殿の押田さん、弥助さんから維盛殿に切り替わる背中が綺麗だった。その後の第一声は調整がちと大変そうだったけれども(^_^;)

土佐坊、狐の精?の動きのキレは流石だった。


丸川さん、小金吾殿は爽やかで傘売りのお声も素敵、殺陣の青いお着物姿の時は図書様のようでもあり凛々しくて、お主を守って散る姿は切なかった。他のお役の時は何かもうやたらノリが良くて(ラップとか 笑)お声もよろしく、知盛殿を追って自死する姿ですら明るく軽妙でつい目で追ってしまいまいた😅


谷山さんは、いやー、凄かった。あの源九郎狐の身ごなし、可愛さ、忠信殿としての凛々しさ、猪熊殿の時の軽妙な狡さ、可笑しさ、各々で変えたお声、台詞。最後の頃はかなりお声はキツそうだったが😅、とても素敵だった。楽日の役者紹介で「やりたかった役、念願が叶った!」とちと枯れてるけれどいつもの可愛い(笑)お声で仰った笑顔もとても素敵だった。


大介さん、権太さんは先にも書いたが悪ぶっていても根は家族思いの良い奴、だからこそ最後は切なく哀しい。

母上とのやりとりは一人オレオレ詐欺みたいだったが(笑)、それもわかった上で母上がお金を渡したくなるのがわかる可愛げ、素敵だった。小金吾さんにたかる所は、この二人、富姫と図書様だったのに、とふと思って内心吹き出していた 笑

そうそう、他に丸川さんの入江殿と出てくる相模殿はやり取りが子供っぽくて可愛いし、散ばら髪で出てくる時は動きも見かけも文楽人形そっくり、そして個人的には最後の頃に出てくる顔を隠したお女中の時の仕草が可愛くて好きなのである 笑


磯村さん、亀井殿。綾央さん、駿河殿。

今回は顔を隠した時も含めてこのお二人はセットなので切り離して書けない 笑

一度「仲良し!」と大向こうが飛んだが(笑)、本当に仲良さそうで楽しかった。

お二人とも台詞も仕草もしっくりしていて、いつも楽しそうに演じてらっしゃるように見えて心地よかった。

綾央さんは、静御前の後ろでノリノリで踊ってる姿が素敵、磯村さんは駿河殿を驚かせて悦に入ってるお顔が楽しかった 笑


秋葉さん、まずは弁慶。勧進帳などと異なり、ここでの弁慶は忠義者ではあるがかなりの粗忽者(^_^;)  

しょっちゅう義経に怒られていて、何方かが言っていたがまるでゆるキャラのようなホッとする存在?笑   

勿論強くて、粗忽さも憎めないおおらかさと愛嬌があってホームランも打ってたし?良かった。

そして、息子が可愛くて仕方ないお米さんも素敵。腹を刺されて瀕死の息子を前にいきなり踊り出し、「ははじゃひと?」と呆気に取られて呼び掛ける権太大介さんの雰囲気も良くて、何だろう、この悲惨さと可笑しみのバランスの妙と思った。ついでに、この母子は「かぶき座の怪人」だとチラッと思ったり・・・(劇団公演の面白さ 笑)


雷象さん、六代君。

可愛い・・・。

見かけも雰囲気もおっとりとなんかポニャポニャ、品もあるけれどどうもつっつきたくもなる可愛さ 笑   

小金吾殿も通常はひたすら敬っているけれど、何かの拍子にはつい遊んでしまいそうになるのを抑えていたのではあるまいか、と木の実の捨て方などを見ていて思った 笑


横道さん、若葉の内侍と飛鳥殿。どちらも良いところの奥方様。

どちらも旦那様よりも大柄だったのだが(^_^;)、たおやかで気品のある気丈な奥様、良かった。


北沢さん、いやー、変幻自在。

藤太殿の楽しい三枚目振り、小せんの色っぽさ、可愛さ、覚範殿のぶっかえりも含めた豪快さ。お見事でした。個人的には、小せんさんの可愛さにクラクラしました 笑


大井さん。は、バケモノ(全面的に褒め言葉)笑

20代の義経殿と静御前に挟まれて、全く遜色なくお可愛らしくお綺麗な(実年齢50歳の)卿の君。仕草も表情も麗しく、義経と実父のために自害するシーンは切なく健気。

さらには御歳6歳?の安徳天皇。「んばぁ」「はぁさま」の呼び方もお可愛らしく、天子として話せば気品もあるし、何なのでしょうね、この方は😅

鬼佐渡坊は他のお二人とトリオで楽しかった 笑


さて、桂さん。

いやぁ、もうねぇ・・・見とれました。

銀平殿は頼もしい色男、ちとくだけた口調もカッコいい。初日辺りははける時の足取りがとても軽くて実はちと違和感があったのだが、数日後に観たら踏みしめるような足取りに変わっていて尚更貫禄が増して良かった。

そして知盛殿になると、なんかもう・・・美しかった。様々な所作が能に近いものだったと思うのだが、清廉な色気と霊気が匂い立つようでクラクラした。

そして、ラストの後ろ向きに飛ぶシーン! 

最初観た時は一瞬、息が止まった。美しかった!

その後、何度観てもあのシーンは固まって観ていた。素敵だった・・・

梶原殿も意地悪そうで実は頼朝殿の意を汲んでやって来た人。陰険そうながら、弥左衛門夫妻のやり取りにオタオタしたり、普通の眼鏡(老眼鏡? 笑)で首実験して、そのまま権太さん見てお互いびっくりしたり、また妙に人間味のある人で素敵? だった 笑    (で、わかってるなら権太さんの妻子、何処かで逃がしてやりなさいよ、と思う😅) 

法橋坊は鬼佐渡坊に同じ 笑


山下さんも変幻自在 笑

川越太郎殿と河連法眼殿はどちらも敬う方に対して謹厳実直(その方のためになら嘘をつくことも厭わないので、ちと違うかも知れないけど)、尼妙林はおおらかで親切、しかも武芸に秀でている驚異の尼ごぜ。殺陣でも踊りでも山下さんの所作はさすがお綺麗だった。


原川さんは、諸悪の根源?藤原朝方。はまってるし、確かに悪と思えて敗れれば嬉しく思うが、キャラとして魅力的にも感じるから面白い。

そして、弥左衛門殿は根っからの善人、女房お米さんとのやり取りも、娘お里さんとのやり取り(デカっ! 笑)も楽しくて、こちらもはまってらした。小金吾殿の首を落として持ち帰るシーンはやけにリアル(後で出てくる首はあの、ボールに顔、だけど)。

しかし、誰もいない部屋で維盛様な弥助さんにお茶を命じておいて、次のシーンでは敬うという切り替えの心理は俗人にはよくわからん (^_^;)


そして最後に加納さん。

ゲネプロの慌ただしさの中でも、お一人断トツに歌舞伎だった。

渡海屋女房お柳の時の商売人のしっかり女房らしさ、内侍の局としての気品、厳しさ、すし屋娘お里のおきゃんな可愛らしさ(ナウシカのあの曲歌いながら出てらした時は吹き出した 笑)、弥左衛門殿と台詞を被せている時のノリノリ振り(これは'傾く'のかぶきだな) 笑

今更ながら恐れ入りました。

臆してしまって「二子玉屋!」と大向こうかけられなかったのが心残り(^_^;)


追記

楽日の役者紹介の時、桂さん、大介さん、各々に「この役をやらせてくれてありがとうございました。」と加納さんに頭を下げてらしたのも微笑ましかった。

あらすじは今回はパス。

花組芝居のページはじめネットに出てますからね。

| | コメント (0)

光垂れーる(ネタバレあり) その2

ぽこぽこクラブ  vol.6

阿佐ヶ谷  アルシェ

2019年12月8日昼 他  観劇

お芝居の情報はこれの1つ前の感想にあり。


書いておきたいことをとりとめなく書く 笑

(あくまで私の勝手な見方、それもお前の答えの一つ、と言うことでご容赦(^_^;)。私には私の想像を越えるものを理解出来ない。だから、私にとっての世界は私の想像通り。これは鴻上さんの戯曲の言葉 笑)

そして長い。しょーもなく長い。

誰に言い訳にしてるんだ?   自分のために書いてるのに 笑


東京初日にまず思ったこと。

前説の方々も去って開演直前の少しの時間、陰でアップしている役者さん達の声と揺れる影がセットの隙間から漏れてきたのだが、個人的にはこれがとても良かった。

内子座で観てすでに話を知っているせいもあって、お芝居と繋がっている一種のプロローグのようにも思えてドキッとしてしまった。

(内子座ではちゃんと控えがあるのでこれは無かった。)


そして、静寂の中、セットの陰からべーさんが現れる。一瞬にして空気が変わる。

内子座の時は客席通路を語りながら歩いてきたのだが、こちらは波が引くように客席が静まっていき、人々の目が彼に集まっていくのが素敵だった。


べーさん、やっぱりすごいと思うのは基本的に陽気で賑やかな"神様"(自体もすごいけど)の後ろに隠れているお父さん、表に出ると途端に大人で真摯で、色っぽくすらなる。お顔真っ白なのに(^_^;)

帽子を脱いだ時の髪のちょっと乱れた感じが妙に色っぽく、一方で相手を見つめる表情がひどく真摯で、二回ともドキッとさせられる。最後の祭のシーン、センターで踊る姿を思い出すとまた泣かされそうになる。


さて、冒頭、セットが一斉に動き出す時、わかっているのに毎回鳥肌が立つようにゾクッとした。あのセットの使い方も見事だった。照明の威力も合わせて、あの舞台が幾重にも重なり、広がり、また収束する。最後列から観た時は特に見惚れた。


力強く、時にたおやかな踊りもとても良かった。美しかった。何かに捧げる踊り。下司さんの凄さを思い知る。音楽もとても合っていて(これはオレノさんの凄さか)、観た後の普段の生活で気がつくとその音楽と掛け声が頭の中に流れていて困った。


で、瑞穂さんと神様のシーン。可愛いけれど一人でずっとそこに居る強さもある磯部さんの瑞穂さん。

「私が見えるの?」と聞く瑞穂さんに笑いかけるべーさんの笑顔はモノノケのそれに見えて、面白いなぁと思った。

もう少し後のシーンで「神様じゃ!」と名乗るのだが、その時の何か内面で葛藤しているような表情もあり、このモノ本体はモノノケで、たまたま拾って被った帽子に宿る父親の強い想いが瑞穂を見つけた時に溢れ、それの精神を乗っ取ったのかも、なんてことを思った。青嵐の逆だな 笑



そしてお供えの儀式?のシーンで、すんなりと特徴が掴める御能村の人々。


きちんと真面目でどこか憂いも見える村長、潔癖と言いながら千加ちゃんが心配で社の中にもすぐに入るみやっち、みやっちには悪態をついたりしながらも甘える面も見せるしっかりものの明るい千加ちゃん、迫力美人の弥生さん、純朴で真っ直ぐ、わかりやすく好青年な真ちゃん、こちらもわかりやすく天然だけど好青年ではある黒ちゃん、その好青年二人に好かれている今は溌剌として可愛く真ちゃんを愛する明美ちゃん。


本当にどのキャラも魅力的だった。

女性陣は明るく強く、男性陣はやや気弱ながら優しくて真っ直ぐ。


瑞穂ちゃんもここに溶け込んではいるけれど、時々ふっと寂しげな表情を見せるのがまた魅力的。一人でいた時の方が達観したようなさばさばした表情をしていたような気もして、なまじ、届きそうで届かない時の方が切ないと言うのはあるかもなと思う。都会から来たミステリアスな可愛い少女って磯部さんぴったりで、東京ラブストーリーの時や冥婚式の件での小悪魔的な仕草もまあ、可愛い、可愛い 笑


そして登場する、とても世俗的な諭さんと理沙さんのカップル 笑


お調子者っぽくて優柔不断だけど、多分誰からも憎まれない可愛げがある諭さん、自分に正直で明るく元気なイイ女!理沙さん。


柏さんのどこか気弱なやんちゃ坊主みたいな雰囲気もぴったり合っていて(すみません😅)、可愛い諭さんだった 笑


そして、魂の叫び?も鮮やかな都倉さんの理沙さん。くるくると変わる表情も魅力的で、ホント、イイ女。弥生さんと意気投合したやり取り、諭さんを巡っての瑞穂ちゃんとのバトル、小山さん、磯部さんとの息もぴったりで、見得をするシーンなど時々拍手しそうになった。



イイ女なのは小山さんの弥生さんも。彼女の叫びも素晴らしかった 笑    

豪快で強くて理沙さんの気持ちもわかってくれて優しくて、しかもあんな美人(ま、今回の女性陣は外面内面ともべっぴんさんしかいないけど 笑)。

冨士夫さんはなるほどヒヤヒヤだろうけど😅、その彼女に結局は愛されてるのだから、貴方も相当な人だと思うぞ 笑

途中から離婚式?の件で冨士夫さんの額にキスするようになったのだが、ここも拍手しそうになった 笑

結婚指輪をしている冨士夫さん、してない弥生さんに気づいた時は内心、なるほど、細かい!と感心してしまった。


一方的に冨士夫さんがやり込められてる弥生さんとのシーンも良いけれど😅、冨士夫さんは実はとても重要な使命を持った人。

向こうの世界とこちらの世界の繋がり方を村人達に伝え、諭さんの多分、本人も気づいていなかった心の隙間をさりげなく埋める。

おちゃらけてるシーンは可愛くて、諭さんと二人のシーンはしっかりお父さんの顔、雰囲気になる玄太さん、内子座の段階であのシーン、玄太さんの底力を見た、と思った 笑

柏諭さんとのシーンはますます息もあって、泣きそうと言う二人に簡単に泣かされる観客😅


弥生さん&理沙さんからの猛烈な攻撃に、聞こえないはずの二人が身を傾げるシーンや、「(届け出用紙なんかじゃなく)  大事なのは人と人」と冨士夫さんと弥生さんが声を揃えて言うシーン、玄太さん、小山さんの台詞の合い方にゾクゾクしたし、また泣かされた。

諭さん&理沙さんには、勿論、プロポーズの場面でも泣かされた。

東京ラブストーリーの時の諭さんと瑞穂ちゃんのあざとい (笑 )やり取り&後ろで悶える理沙さんもとても見応えがあるけれど 笑、「何回俺にプロポーズした?」「100回くらいしたわ!」からの「101回目は俺が貰う!」の展開。

これ、内子座ではなかっただけに、それが来たか!と吹き出してしまったが、セルフナレーション付でシーンを再現する柏諭さんのどこか可愛い迫力と、それを見つめる都倉理沙さんの溢れるような笑顔、こう書いていてもまた泣きそうになった😅



ま、このお芝居、泣かされるシーン、書きたいシーンが山積みで、いつまで経っても終わる気がしない(^_^;)

でも、書く 笑



酒屋の千加ちゃんのお母さん(ババ、とみやっちは呼んでる)、認知症が進行中で、薬を飲むと落ち着いて26年前に死んだ娘の存在が腑に落ちない。薬を飲まなければ、認知症は進むが千加子の存在を普通に受け入れる。根本は娘を失ってもここで生きてきた気丈な女性でお茶目さも見える水原さんのババ、素敵だった。

そして、心配した娘があの世から迎えに来たと理解した時に告げる台詞が「死ぬまで生きる。それが生きている者の務め。」

カッコいいです。泣かされた。


見守るみやっちと千加ちゃんのシーンは微笑ましい。


三宅さんは住み着いているわけではなくて(家はここにもありそうだけど)、限界集落を見回る行政の人なのかとも思う。

ババを時々見にきていて、甦った千加ちゃんに最初は驚いたろうけど惚れた、と 笑


内田さんの千加ちゃん、罪作りにキュートだし。お土産の髪飾りを喜ぶ千加ちゃん、すごく可愛くて、そりゃ、陰でガッツポーズするよね、みやっち 笑   

しっかりしてるくせに時々脆くて、すがるような目をして「私はなぜ甦ったの!」

「俺じゃ、ダメか?」

言うよね、みやっち😅


で、「俺達も冥婚式するか!」

「(キョトンとして)なんで?」(^_^;)


楽日にたまたま機会を得て、思わず、内田さんに「千加ちゃん、ひどくないですか?」と聞いてしまったぃ 笑

答え、「だってお兄ちゃんだから・・・」


あ、あー、なるほど。

お兄ちゃん、大好き!な笑顔ですか、あれは😓

罪作りだねぇ 笑

内子座の時は一輝さんがみやっちで、千加ちゃんの雰囲気と合わせてどちらかと言うと弟っぽくて、お姉ちゃんが「なんで?」と言ってる感じだったかも知れない、そう言えば 笑


北村さんのみやっちは、ちとぶっきらぼうだけど良い人らしさが滲み出てる感じで、あー、確かにお兄ちゃんっぽいかも。良かった。

(一輝さんのみやっちはちといじけそうな雰囲気も可愛い弟キャラだったと思う 笑)

東京ラブストーリーの曲に合わせての場面転換に出てくる時のアクションが毎回かっこよくて、その後が可笑しいだけに余計に見物だった 笑


その東京ラブストーリーの曲に乗って踊りながら場面転換するシーン、3組のカップル?😅のやりとりが各々違っていて可笑しくてどれも観たくて困った 笑

どこかのドラマのワンシーンみたいなのを色々やってくださるのだが、男女(みやっちと千加ちゃん、真ちゃんと明美ちゃん)でやっても可笑しいのに、一組は村長と黒ちゃん。何なんだ 笑

でも、あのシーンの最後の方は一輝さんのモデルウォークみたいなのに毎回気を取られて見つめてしまった 笑    そうそう、オレオレ詐欺辺りのところは一輝さん作だそうだ 笑



さて、生者と死者ではあっても、本当にあったかくラブラブカップル、真ちゃんと明美さん。

二人でぼーっと星を眺めている表情がそっくり過ぎてつい微笑んでしまう 笑


内子座で初めて観た時に、とにかく純粋な真ちゃんが素晴らしくカッコ良くて泣かされた。

匂いで生命の息吹きを感じる姿も素敵だし、明美ちゃんと別れることを最初は反射的に「嫌だ!」と言ってしまう所も、落ち着いてしっかり考えて明美ちゃんの将来と向き合う姿も、黒ちゃんに無謀に突進しそして頭を下げる姿も、「大丈夫なんだから!」と強がる明美ちゃんを抱き締める姿もピュア過ぎてキラキラしてた。さかもん、恐るべし。


それを受けるくららさんの明美ちゃんもまた負けずに素敵だった。

真ちゃんとのラブラブなやり取りはとにかく可愛くて、真ちゃんを好きな気持ちと将来を考えない訳ではない板挟みの苦悩の表情がちらつくのも良かった。明美ちゃんは賢い人なんだと思う。だからこそ過去に追い詰められたこともあったのかも、なんて思えた。



真ちゃんがいるのに明美ちゃんを好きになる黒ちゃんの気持ちもわかる。

ピュアと言うよりは天然?な黒ちゃんは、その分、現実をシンプルにストレートに見極めている感じ。本能的に生き方を知っているような・・・

小河さんのおおらかな笑顔は黒ちゃんにぴったりな感じがした。家族に法要してもらいなね、と言われて村長を抱擁してしまうズレたところも、何とも言い難い表情で腕を外す一輝さん村長も合わせてあのシーン好きだった 笑

さて、村長の一輝さん。

真面目で誠実でいつも一所懸命に努力してきた人と言う雰囲気はとても感じた。今の状態に悩んでいるのも、生者に嫉妬と言うのもすんなり納得できた。

虚構の劇団ではどちらかと言うと黒ちゃんぽい役が多かった気がする一輝さんだけれど、人には優しく、自分には厳しいどこか焦燥感が漂うこういう役、はまると思う。

先の感想にも書いたけれど、

「生きていると言うだけで君達にはゼロではない可能性がある。」

普段ならちと斜に構えて聞いてしまいそうな言葉が彼の口から出るとすっと入ってきた。


可能性と言う点についてはぐるぐる考えてしまう所があってそれは後で書くけど、とにかく村長の抱いていた夢はこの状態では叶わないものなのだろう。

そこから生者の可能性に繋がり、自分だけでなく村を終わらせることを考えたと言うことかな。

独りよがりとも見えるけれど、客観的に状況を見ている責任感の強い人なのだろうと思った。

そして最後の祭のシーン、一人少し離れて語る村長の姿が照明で浮かび上がる。とても綺麗だった。



さてと、今回のお芝居、ついつい色々な解釈を試みたくなってしまうのも魅力の一つだと思う。

と言う訳で勝手なことを書く 笑


「(自分は)どうして甦ったのか。」と村長も千加ちゃんも問う。

真ちゃんは「明美に会うために甦った。」と言い切るけれども。(それもお前の答えのひとつ、だな。)


神様が死者達を甦らせたのは瑞穂ちゃんのためだとして、その人が甦る理由は遺品があっただけではなく、その人自身のこの世への思い入れなのではないかと勝手に思ったりする。ま、台風で亡くなった方々はほとんど気持ちが残っているだろうから、皆、甦る気もするけれど。


甦るのは誰かのため、誰かの希望ではなくて自分の想い。それが満たされれば次に進める。なんてね。



甦った死者達には可能性はない。最初、それはそうだと思ったのだが、あそこまで生者と変わらない死者達だと本当に可能性はゼロなのか?とふと思った。


生者と一緒に年は取れない。子供も持てない。

村から出られない。

同じ生者と一緒にいつまでも暮らす訳にはいかない。だから、生者を縛り付けるのは良くないと思う。


でも、例えば農作物の改良とか天体の観測とかの研究系、絵画、彫刻などの美術系など、期限を切られずに探求出来たら面白いことも色々あるよな、なんて思ったりして・・・


ただ、それがある程度モノになってからの先がないのか。発表出来る場。認められる場。


村長の言う可能性とは、他者が存在し、承認して貰える何か、になるのか?


でも、それは生者にこの村に来て貰えば良いような・・・

いや、となると期限のある生者がそれを許さなくなるか・・・なんて考えていたら、心温まる世界から殺伐としたSFになりそうになって止めた😅



生きていると言うことは何だ?   

変わる、変化する、そしていつか死ぬ。


「いつまでも幸せに暮らしました。」だとお伽噺になってしまうのか。

一緒に年を取れない死者達はロボットと同じか・・・と思ったら、アシモフのSF「アンドリューNDR114」が浮かんだ。人間になりたいアンドリューが最後に求めるのは死ぬこと。そのままなら部品を交換していつまでも存在出来るのに、わざと寿命を設定して朽ちる。


期限があるからこそ輝くもの、一所懸命になれるものがあるとは思う。



何となくだが、あの"神様"はあの後もずっとあの場に居続ける気がしてしまう。


瑞穂さんにあそこから動くきっかけを与える為に村を作った。

だから、瑞穂さんが望めば他の人々の気持ちなんぞは聞かずに村を終わりにしようとする。そこのところはかなり独善的。元々、村人のためじゃないのだから当たり前。


5年前に諭さんが帰省した時はなかったのだろうし、一番新しい移住者の黒ちゃんは1年弱。その黒ちゃんは、死のうとしていた明美ちゃんのことを知らなそうだから、明美ちゃんが元気になるまで1年?なんて考えると、あの村は2年か3年前くらいからあるのかな?


とすると20年以上も瑞穂さんは一人さ迷っていた?


これも勝手な想像 笑


やはりあの本体はあの地に根差したアヤカシ、モノノケで、たまたまその地で朽ちた父親の帽子が奇跡的に保存された状態であったのを見つけたのが数年前。で、帽子に残った父親の想い、魂が瑞穂さんを見つけて・・・

ちょっとタンジェリン入ってるな(^_^;)


モノノケと一体化してしまった父親の魂はそこからもう動けない。

ような気がする。



ラストの瑞穂さんの台詞、「お父さん」が入る回と入らない回があった。



どちらも各々に良いと思う。


「お父さん」が入らない時は、それこそまた色々想像出来る。


その土地の氏神様のような存在が瑞穂さんを見初めてやったこと、とかね。(そう考えた時、エリザベートか?とチラッと思ったり・・・笑)

帽子を被せた後、神様は瑞穂さんを見ない。

そこも色々考えてしまう。


解釈次第で、かなり異なる印象の舞台にも出来そうだ。


とにかく今回の舞台には引き込まれて、引っ張られた。

内子座版も東京アルシェ版も観ることが出来て良かった。

| | コメント (0)

光垂れーる(ネタバレあり) その1

ぽこぽこクラブ vol.6

阿佐ヶ谷アルシェ

11/29夜  他 観劇


作・演出:三上陽永

脚色:渡辺芳博,  杉浦一輝

(以上、ぽこぽこクラブ)


音楽:オレノグラフィティ(劇団鹿殺し)

振付:下司尚実(泥棒対策ライト)


キャスト:

村上諭:柏進(WATARoom)

滝沢理沙(諭の恋人):都倉有加(シープラス)


村上冨士夫(甦り人   諭の父):高橋玄太(ぽこぽこクラブ)

村上弥生(甦り人   諭の母):小山あずさ


山田司(甦り人    村長):杉浦一輝(ぽこぽこクラブ)


黒岩猛(移住者  元バックパッカー?   明美が好き):小河智裕


大田原真二(甦り人    明美の恋人):坂本健(ぽこぽこクラブ)

篠原明美(移住者   自殺未遂者?  真二の恋人):湯浅くらら(ノックス)


三宅耕三(移住者   行政の人かも? ):北村海(ジャパンアクションエンタープライズ)

中島千加子(甦り人   酒屋の娘):内田敦美

中島の母(ババ,  認知症が進行している):水原睦美(ロットスタッフ)


神様:渡辺芳博(ぽこぽこクラブ)

渡辺瑞穂(甦り人):磯部莉菜子(エンパシィ)



良かった!

凄く引き込まれた。いや、今も引っ張られていてちと困る・・・


内子座公演も観て、このお話、お芝居、好きだと思ったが、東京公演でますます好きになった。

内子座バージョンと同じでもあり、違ってもいて、どちらもそれぞれに良かったけれど、今は東京バージョン。

幾つかの生者と死者の家族のエピソードが展開するが、どの家族も皆、互いを思いやり、表現は荒っぽくてもとても優しい。あちこちで泣かされて困った。

一見、生者と何ら変わりのない甦った死者達。時を越えて巡りあい、お互いに強く必要としているならそのままでいいじゃないかとすら思えるけれど、一緒に歳は取れない。この村以外での可能性は試せない。

「生きているだけで君達にはゼロではない可能性がある。」

普通だったら思わず斜に構えて受け取ってしまいそうなものすごく真っ直ぐな言葉が、幾つもすいっとこちらに飛び込んできてドキドキさせられた。


しっかりとした意志を持って進むパワフルでキュートな女性陣、優柔不断だったり迷っていたりはしても優しく柔軟に受け止めるやはりキュートな男性陣。

役者さん達がそれぞれのキャラをとても生き生きと演じてらして、メリハリ、バランス、どのキャラもとても魅力的。


そして、舞台セットの使い方、照明、音楽などが相まって、あの空間に世界が幾重にも重なり、広がり、また収束し、なんかもう内心唖然としてしまった。


踊りのシーンも、内子座でのより大人数でのバージョンはまさに祭りのようで素晴らしかったが、東京バージョンの勢い、熱量、全然負けてなくてまたここでも泣かされた。

ここのところ、「偽義経冥界歌」、「相対的浮世絵」、「Q」など死者と生者が絡むお芝居を幾つか観ているのだけれど、勝るとも劣らず印象的。


役者さんそれぞれについても書きたいけれどすでに十分長いし、観る度に進化していくのでまた改めて書こう(^_^;)


とりあえず、内子座の段階で、

出てきただけで空気を変えるべーさんに流石だ!と思い、

笑いを取りながらちゃんとお父さんな玄太さんに泣かされ、

今一つ報われない役(この時はみやっち)の一輝さんの切なさに苦笑しつつ応援し、

どこまでも純粋なさかもんさんにカッコいいと見とれ、

お芝居には出なかったけれどこれを作・演出した陽永さんにクラクラした。


(あらすじ)

ずっと一人でいた少女の前に"神様"と名乗る男が現れる。

「そなたの望みは何だ?   叶えてやろう。」

「もう一度、この村で暮らしてみたい。」


同棲5年、煮え切らない諭に業を煮やした理沙が、彼を引っ張って彼の両親の墓参りに訪れる。

26年前の台風被害により廃村同然のはずのこの村から祭りのような物音が聞こえてきて、こっそり覗いた二人は甦りの儀式に出くわす。

この時に甦ってきた男はなんと諭の父親。


御能村。台風後も残っていた人達や移住してきた人達と、"神様"が甦らせた死者達が共に暮らす村。


26年前に亡くなった両親との再会を諭は喜ぶが、そこにやはり26年前に亡くなった諭の同級生で初恋の相手、瑞穂が現れる。

すっかり舞い上がった諭に怒り心頭の理沙。

諭と諭の父:冨士夫は買い物に逃げ出し、理沙は諭の母:弥生と酒を酌み交わす。


その頃、村長:山田が村の主だった者を千加子の酒屋に集めて集会を開いていた。

甦った千加子と彼女に好意を寄せる移住者の三宅、甦った真二と彼と出会い生きる力を取り戻した明美のカップル、明美のことが好きな一番新しい移住者 黒岩。


山田の話は

「この村をお仕舞いにしたい。生者をここに縛り付けて良いのか?  この村では将来を語れない。」


皆、簡単には飲み込めない。もう二度と会えないなんて嫌だ。


丁度、酒を買いに来た冨士夫が声をかける。彼はまだ微かに甦る前の記憶がある。

こちらと向こうは違う星のようなもの。でも、夢で目が合った時だけは世界が繋がる。


認知症が進みつつある千加子の母親は、意識がはっきりした時に千加子に言う。

「死ぬまで生きる。それが生きている者の務め。大丈夫、近いうちに行くから。」


保育士になりたいと言う明美の夢を知った真二も、好きだからこそ別れを決意する。


瑞穂も成仏することを決意するが、神様が引き留める。

「最後の願いはないか?」「結婚式をしてみたい。」


希望の相手は諭。


冨士夫と酒を酌み交わしながら理沙との結婚を決意し、プロポーズしたばかりの諭の前に、神様が瑞穂との冥婚式を押し付けにくる。

まんざらでもなさそうな諭に怒り、断固拒否の理沙に神様が自分の帽子を被せて頼み込む。


何かを悟った理沙は渋々認めるが、諭は同時に結婚式を挙げることを提案する。両親に理沙との結婚式を見せたい。


理沙も瑞穂も了承し、ならばと真二も明美との冥婚式を挙げることになり、村を挙げての大イベント。宴だ!祭りだ!


大型の台風が近づいて来る中、生者も死者も一緒になって踊る、踊る・・・

大丈夫、夢で会える。その時はちゃんと目を合わせて話をしよう。


海の中とも土の中とも知れぬ場所に一人座っている神様の前に瑞穂が現れる。


「成仏しなかったのか?」

「私はいつでも出来るから。」


神様が瑞穂に帽子を被せる。

「何となくね、わかっていたよ。ありがとう、楽しかったよ。お父さん。」

「伝わってるかなぁ・・・」

~~~~~~~~~~~~~~~


内子座の、一種、天上の世界のようにも土着の神話の世界のようにも見えるあのラストの雰囲気も得難いものであったと改めて思う。


それにしても、人を集める力も含めて、ぽこぽこ君達の底力、凄いなと改めて感動してしまったぃ 笑

| | コメント (0)

三億円事件(ネタバレあり)

ウォーキング・スタッフ  プロデュース

シアター711


10/13昼(繰り下げ初日)、10/18夜、10/20昼(東京楽日)観劇


作:野木萌葱

演出:和田憲明


キャスト:

馬見塚(府中署  課長?):中西良太

高瀬(府中署  新聞記者と繋がりがあった拝島とペアを組んでいた):福本伸一(ラッパ屋)

華山(府中署   天本を指導):八代進一(花組芝居)

天本(元捜査一課、内心戻りたがっている):小林大介(花組芝居)

萩荘(本庁   管理官):おかやまはじめ(ラッパ屋)

古城(本庁   元機動隊):若杉宏二

白砂(本庁   公安外事課):加納幸和(花組芝居)

宮内(公安外事課  白砂の弟子):石田佳央



三億円事件の時効までの3ヶ月、犯人逮捕に格闘する8人の捜査員の話。

残り3ヶ月で規模を1/10以下に縮小され、所轄4人、本庁からの訳有りな4人の8人。各々の事情にぶつかり合いながらも、もう少しで犯人に手が届く、と思ったところで公安からの一人が消えて時効成立。


良かった。すごく良かった。

ウォーキング・スタッフ プロデュースとしての初演を観ているし、史実もあって結末はわかっているにも関わらず、今回の繰り下げ初日(台風で本来の初日が中止)に観た時、引き込まれ過ぎて鳥肌がたったようになり、終演後もしばらく足がガクガクしていた。


続投の方々も今回新たに参戦の方々もすごい一体感。


所轄組の気脈の通じ方、本庁組との確執、公安二人の異質さ、それでも共に過ごす内にそれなりに育まれる関係性、どれも見事で、他の舞台も色々拝見している役者さん達なのに(頭のどこかではそれもわかっているのだけれど)、その役の人にしか思えなくなり、真剣にハラハラして応援してしまっていた。


史実から犯人が捕まる訳はないのだけれど、それでも実行犯くらいは捕まるのでは?  捕まって欲しい、と毎回思ってしまった。


(真面目に、一度くらい犯人が捕まるパラレルワールドバージョンを観てみたい。)


セットは捜査本部の部屋、小道具もさりげなく色々細かくて、結婚指輪をしてる人、してない人、各々のメモやらノートやら、スーツが途中で変わったり、と、その人の背景をふと考えてしまったりする。

急須が途中で変わったり、灰皿の吸殻の具合とか、何かの拍子に目に留まるとその拘り方に驚かされた。


客席が対面式で、時には観客までも妙に関わっているように見えたりするのも興味深かった。


ここからは役者さん。


中西さんの馬見塚さん、いかにも昭和の叩き上げ刑事の長、課長だっけ?。

厳しいけれどざっくばらんで、ちゃんと部下を守ろうとする頼れる上司。眼鏡を外して目を揉む仕草がとても似合っていた。蜜柑農家の話など、苦労人なんだろうなぁと思ってしまった。


頼れる上司なのは、おかやまさんの萩荘さんも同様。

どちらかと言うとニコニコした役のイメージが強いのだけれど、冷静、理知的なキャリア管理官、有能さが溢れていて、ちと驚いたくらいかっこ良かった。


一方、異質な上司?先輩? 白砂さん、加納さん。

宮内さんのことは本気で可愛がって心配していると思うのだが、何を考えてどう動いていたのか私なんぞには計り知れず、一見もの柔らかな物腰の裏に抱えた闇の深さを感じさせる白砂さんだった。


その弟子の宮内さんな石田さん。不器用と言うか、融通が利かないと言うか、ちとアンドロイドっぽい反応の仕方、元々なのか追突事件のせいなのか、とにかく何かのネジがズレている感じがとてもしっくりして見えた。


それからすると、若杉さんの古城さんはあけっぴろげ。むしろ、自分の感情をある程度晒すことでバランスを取っているのかなとも思った。仕事中に何人か殺してる、等と恐ろしいことを言ってるんだけど(・・;)、好感が持てた。

最初、敵意をむき出しにしていた華山さんが最後の頃は席も譲るようになってたのもそういう感覚が所轄の方々に通じるものがあったのかもと思う。


で、その華山さんは八代さん。高瀬福本さんとのやり取りが初演の時以上にあまりにも自然過ぎて、若干クラクラした(^_^;)

一匹狼を気取っているようで実は高瀬さんのことも天本さんのこともとても気にかけていて、人情に厚い人なのだろうと思う。「弔い合戦だろ。」とか華山さんと高瀬さんのやり取りに一番泣かされた。

天本さんについて「あいつ、いつかこっちに座るのかなぁ。」(うろ覚え、不正確)と言ってるシーン、可愛がってる弟が自分を追い抜いていくのを寂しさを感じつつ喜んでいるお兄ちゃんみたいで、すみません、可愛かった 笑

ついでに、初日、登場された時の最初の感想は「黒髪の八代さんだ!」

すみません 笑


「(いびられても)あいつにならいいや。」と笑うもう一人のお兄ちゃん 笑、高瀬さんの福本さん。

もう、まともに良い人過ぎて危うくて、またクラクラした。あの真摯さはどこから来るんだ?と言うくらい真っ直ぐに張り詰めていて、こちらまで息苦しくなるくらいだった。


そして、一番若手だけど結婚指輪はしている天本さんは大介さん。どちらかと言うと上の立場の役を演じる姿を観ることが多い大介さんだが、ここでは少し生意気な後輩にちゃんと見えて、流石だと思った。妻帯者となると本庁に戻りたい気持ちに意味合いが増える気がして、結婚指輪に気づいた時から天本さんの印象がちと変わった(前回の伊達さんの時はどうだったのか気づかなかった・・・)


とにかく、皆様、素敵でした。

対面側から観られなかったのが心残り。

また観たい。戯曲が欲しい。

| | コメント (0)

ピルグリム2019(ネタバレあり)

虚構の劇団 第14回公演

 

シアターサンモール(東京)
近鉄アート館(大阪)
あかがねミュージアム(愛媛県 新居浜)

 

2/22夜、3/10昼、3/17昼、3/24昼 他(笑) 観劇

 

 

作・演出:鴻上尚史

 

キャスト:
六本木ミノル:渡辺芳博
直太郎:秋元龍太朗
朝霧悦子/ラブミードゥ:小野川晶

 

マッドサイエンティスト:三上陽永
鈴木文華/タンジェリンドリーム:小沢道成
浦川/ウララ/テンクチャー:森田ひかり
ハラ/ハラハラ:梅津瑞樹
キョーヘイ:金本大樹

 

ムーンライトビリーバー:溝畑 藍

 

黒マント:伊藤今人(梅棒/ゲキバカ)

 

シンシア 他:吉原桃香
オアシス,アジールの住人その他:那須康史 山越大輔

 

 

アンサンブル:石田彩乃, 坂本健, 辻捺々,

 

 

 

 

大千穐楽も終わってから書いている。

 

 

良かった。
未だに油断すると気持ちを引っ張られそうになる。鳩尾辺りがおかしくなる。
まさに「軋む」ので、いい加減ちと困る・・・

 

そのくせ、話を解釈しようとすると未だに何だかよくわからない。掴めない。自分の中でも上手く落ち着かない。

 

部分、部分では琴線に触れる、とても引き寄せられる言葉、シーンがあり、そして、どのキャラもそれぞれに鮮やかに魅力的で惹き付けられた。

 

大体、今、居る場所(土地、家族、集団、社会 とにかく自分が居る処)に違和感や幻滅を覚えてここではない何処かを求める話を始められたら、私のように確固たる自分を持たないくせに妙にプライドは高くて、精神的に常にウロウロしているような奴は引っ張られますよ、そりゃ(・・;)

 

私にとっては、綺麗だ!と惹き付けられて、もっと良く見ようと見つめ過ぎるとかえって見えなくなる星みたいなお芝居だったかも。

 

ま、私はただの観客なので好きだと思えるものが観られればそれで良いのだけれど。
それでも感想を書こうとすると考えてしまう訳で・・・

 

 

 

ものすごく表面的に捉えれば、

 

自分達で勝手に神格化した若い作家の元に集まったはみ出し者達が共同体を作るが、人間関係が上手く行かずに失敗。一人の犠牲者を出したことを気に病み、共同体を抜けた作家が、スランプの果てに当時のことをモチーフに小説を書き出し、自らその妄想に取り込まれ、自殺を図った。

 

 

 

 

・・・・・・・・違う。

 

 

 

そう言うことじゃない!
と、四方八方から抗議の声が飛んできそうだ(^_^;)

 

 

 

違う。
と私自身が思う。

 

 

 

でも、一面から見ればあながち間違ってるとも言えないと思う。

 

 

それがどうしてあんなキラキラしながら鳩尾辺りをヒュッとさせるようなお芝居になるのか・・・謎だ・・・

 

 

あの世界は六本木先生が創り出したもので、それぞれのキャラには先生の想いの何かが反映されているはずで・・・

 

そもそもこれは鴻上さんが創り出した世界で・・・と取り留めなく考えてしまうので、一旦、止め(^_^;)

 

 

 

内容について書こうと思うと思考が錯綜して四方八方に飛ぶので、とりあえずキャラ、役者さん達。

 

(どう考えてもやみくもに長くなるな、これ。と言うより、すでに長い(-_-;))

 

 

皆様、素敵だった。

 

 

天草四郎からガラッと変わった(笑) 秋元さんの直ちゃんは、諦観したような六本木先生に果敢に絡み、潔く弾けていて可愛かったし、カイに呼び掛けるシーンは切なかった。彼は隠していることはあるけど、水晶に映しても、多分、一人な気がする。
先生に跳び蹴りする所は流石だった 笑
(なお、個人的には直ちゃんが「カイ!」と呼び掛ける度に、何故か一代前の直ちゃん:山本耕史さんがカイとして浮かんでしまってた 笑)

 

 

その六本木先生は予想通り渡辺さん。これまでも落ち着いた達観、諦観したような役が多くて誰かを迷いながら見捨てるようには思い難いので、最初、個人的にはちと違和感も感じたのだけれど、すぐに消えた。特に大千穐楽、ようやく上手になり(ずっと下手だった)、クライマックスのお顔がまともに見えて、こんな表情してたんだ・・・と、一気に泣かされそうになった。

 

 

編集者の朝霧さん、晶さん。観る度にお綺麗になるのに、線が細い感じが全然しない 笑
アグレッシブで弱さを感じない訳ではないのだけれどたくましい朝霧さん、素敵だった。
そして、ラブミードゥ。あの羽の動かし方に惚れました! 笑
あの姿で切なくなるのだから恐ろしい。(ま、これは晶さんだけでなく、周りの方々も込みでだけど。)

 

 

黒マント、今人さん。穏やかなのだが独特の雰囲気があって、黒マントの異質性と合っている気がした。
でも、私にとって、黒マントも掴めそうで全然掴めない存在だ。生け贄そのもの・・・うーむ。

 

 

 

ここではない何処かを求める旅人達。
彼らのやり取りが楽しいわ、可笑しいわ、可愛いわ、そしてふいに切なくなる。観る度にそれぞれの役への馴染み方が深くなってドキドキさせられた。

 

 

 

マッドサイエンティスト、陽永さん。
オアシスを探して颯爽と明るく輝いていて、タンジェリンを心底大切にしている姿は微笑ましく(ラブミードゥやムーライトビリーバーには結構子供扱いされてた 笑) 、とても素敵だった。
だからこそ、変わっていくタンジェリンをただじっと見詰めるだけのマッドさんの言い様もない表情についつい引っ張られてしまい、この時のタンジェリンは勿論、六本木先生やそしてテンクチャーの表情も観たいのに、と、かなり悩乱をいたしました・・・
そして気がつくとマッドさんは消えている。
え?と思った。
他の旅人達にはそれなりに結末があるのに彼には何もないのか?
と考えてしまったのだが、オアシスを探していたのは彼だけだ。彼が研鑽した魂のタンジェリンの変貌と共に、六本木先生のオアシスへの希望が消えたと言うことなのかも・・・と思ったりした。

 

オアシスはどこでしょう?
大体、オアシスとは何だ?場所?それとも何かの社会?
青い鳥って訳でもなさそうだしな。
何となく常に求める先に見えるものであって、たどり着くものではないような気がする。

 

 

タンジェリンドリーム/鈴木文華、小沢さん。
初日、登場シーン、うひゃあ?! それ? それですか?!
でも、そうだよねぇ。
と内心、悶絶してました 笑

 

頬を膨らませてマッドさんとにらめっこ。
まあ、可愛い、可愛い。何だろな、この同期二人 笑

 

魂の彼女は、他者との共感力が高く、各所に現れる番人達ともすぐに繋がりを形成し、九頭竜様の孤独をも呑み込むのに、実体化した彼女は六本木先生と彼の創造物であるコミューンの理想像しか見ない、見えない。
テンクチャーを責める言い方、六本木先生にすり寄る姿がすごくパラノイア的で怖かった。
一歩間違えばとんでもなく嫌なキャラにもなりかねないのに、最後までとても魅力的だった。

 

 

 

ウララ、ひかりさん。
お姫様を自称する彼女は、ユートピア、理想郷を探す人。テンクチャー、浦川さんの見えない方の人が実体化したようなものかな?
我が儘そうに振る舞っても振る舞い切れない。でも元気に振る舞うウララは楽しかった。
そして浦川さん、テンクチャー、良かった・・・壊れかけた共同体を必死に守ろうとしている姿。あちこちの表情を見逃したくなくて大変だった。自らを刺す六本木先生を歯を食い縛るようにして凝視する所などすごくて、なかなか六本木先生に視線を移せなくて困った。
あ、那須さんと山越さんを従えて、ブルゾンさんのように微笑む姿も素敵だった 笑

 

 

 

キョーヘイ、大樹さん。
いやぁ・・・キラキラしてた。
あれだけ踊りながら台詞も綺麗で佇まいも伸びやか、理不尽な命令もまずは笑顔で聞くという奴隷族の習性みたいな感じもとても哀しく自然で、上手いなぁと思った。
彼が探していたのはアジール。封印された場所も一種のアジールと言えなくもない、のか?
鏡の洞窟に封印されて、彼はずっと何を見続けるんだろう。
(でも、薬が切れたらどうなりますかな?とチラッと思った(^_^;))

 

 

 

ハラハラ/ハラさん、梅津さん。
初日は、正直、一所懸命さが前に出てしまってぎこちなくなっているような気がして、観てるこちらがちとハラハラしたが(^_^;)、観る度に自由になっていく感じで存在感が増してた気がする。構って構ってなウザさやイタさがちゃんと可笑しさになって、恥ずかしいくらい真っ当な願望がすごく切なくて、最期よりも九頭竜様のところで泣かされた。
そもそも、生まれて第一声が「生まれてきてすみません。」・・・
(しかし、スラッと今時のイケメンな梅津さんにこの役させますかぁ、鴻上さん、と内心思った 笑)

 

 

 

ムーライトビリーバー、溝畑さん。
歌って踊って、踊りながら旅人達を人を食ったような物言いでいなして、その実、妹を救うために九頭竜様のガードを通り抜けようとしていた人。

 

って、どんな人だ?(・・;)

 

お歌も良かったし、身のこなしも鮮やかで素敵だった。旅人達がオアシス?にたどり着いたお祝い会でタンジェリンとマッドに「知りませんよ?」とニコッとするところが妙に印象に残った。
過去のことは忘れてしまう世界なのか、妹なのか? 妹なら入り口にいた彼女はどうなったんだ?

 

 

 

研修生の吉原さんはメイドのシンシアとして出てらして、重い役をさらりとこなしてらした。
那須さん、山越さんは背も高く、ご主人様役やテンクチャーのバックなどとても見栄えがして素敵だった。
お三方ともオアシスのシーンや、ダンスもそれぞれ素敵だった。

 

 

さらにアンサンブルの石田さん, 辻さん、そして坂本さん。
辻さんは、朝霧さんの後ろでパネル持って踊ってる姿がとてもキュートだった。いつもビシビシと音がしそうなくらいきっちり踊ってらして表情も楽しくて。

 

石田さんもすごく笑顔で踊ってらした。坂本さんとタイタニックやったり可愛かった 笑

 

で、その坂本さん。
ぽこぽこの坂本さんを虚構の劇団公演で観るなんて、可笑しいやら感慨深いやら・・・
勿論嬉しかったのだが複雑な気分にもなった(^_^;)
ダンス、ご主人様役、その他いろいろ、出てらっしゃる度につい目で追ってしまい、慌ててメインのお芝居に気を戻したりしてました 笑

 

 

以上で、一旦終了。
徐々に訂正、追加していくかもしれない 笑

 


(あらすじ)

 

連載打ち切りを宣言された作家:六本木は、編集者:朝霧から「ディストピア小説を。」と提案されたこともあってか、最後の小説にするつもりで、かつてのコミューン仲間:鈴木文華(押し掛け居候の直太郎は彼女の名を聞いて顔色を変える)の文章「黒マントの思い出」をモチーフとした長編小説を書き始めた。

 

 

オアシスを目指す魂族のマッドサイエンティスト、ユートピアを目指す短命族ウララ、アジールを目指す奴隷族キョーヘイの三人は揉めたりしつつも何故か一緒にここではない場所に向かって旅していた。

 

突然、黒マントの男が現れ、答えられない問題を出し、ユートピアもアジールも無いと言い捨てて去っていく。

 

三人が唖然としていると、マッドがずっと引いていた棺が開き、タンジェリンドリームが現れる。かつては実体をもっていたらしいタンジェリンは、ボロボロの状態で山中にいたところでマッドに見出だされ、魂としての研鑽を積んでいたが、些細なことで棺に隠れていた。

 

宿を探す彼らの前に再び黒マントが現れ、ウララが命と引き換えに産み落としたハラハラの誕生を代金として宿を提供する。

 

 

彼らはオアシスへと続く洞窟の入口にたどり着く。入口にいたムーライトビリーバーから、入口を守る九頭竜様の怒りを静めることが出来れば入れるかも、と聞き、様々にチャレンジするが上手くいかない。最後にハラハラが命と引き換えに九頭竜様の怒りを静められたかにみえた時、

 

書き進める六本木に黒マントが話しかける。「死んじゃダメだよ。死ぬことに意味はないんだから。」

 

驚きながら六本木は書き直す。

 

ハラハラは死ななかったが、九頭竜様の怒りも静まらなかった。そこにタンジェリンが進み出て「一緒にオアシスに行きましょう。」と呼び掛け、小さくなった九頭竜を呑み込んだ。

 

 

再び、黒マントが六本木に話しかける。
「一緒に行くかい?」
引き寄せられるように歩み出す六本木。

 

 

進んだ先は鏡の洞窟。
見える自分と見えない自分の葛藤が矢となって降ってくる。
六本木も一緒になって、洞窟の案内人ラブミードゥに抜ける方法を尋ねると、「イケニエを捧げれば、一時的に葛藤が麻痺して抜けられる。」

 

イケニエなどと否定する六本木がマッドの発明薬バイバイケンオ(見える自分と見えない自分の弱い方が消え、葛藤はなくなる)の話をすると、いきなりキョーヘイがそれを飲み込み、見える方が消えていく。

 

キョーヘイはご主人様の「死ね。」の命令から同じ奴隷仲間にも裏切られ逃げてきた。
彼はイケニエになることを選び、残った旅人達は洞窟を駆け抜ける。

 

 

着いた先はオアシス?
テンクチャーをはじめとする人々がにこやかに一同を迎えるが、もてなしのご馳走を食べたタンジェリンは「この味を知っている。泣きながら作ったのか?」と問う。
笑顔のままでテンクチャーは否定する。

 

この場所を見て歩くうちに、六本木はかつてのコミューンを見て取り混乱する。
そしてタンジェリンも変貌していく。六本木を崇め、それを周りにも強要し、やがてマッドに実体化の薬を求めて実体化する。
マッドはなすすべもなく見詰めている。

 

黙ってタンジェリンの言うことを聞いていたテンクチャーだが、突然、イケニエの儀式を始めると言い出し、人々がナイフを持ってタンジェリンに襲いかかるとみせて、六本木を拘束する。
彼こそ本当のイケニエだと。

 

 

そこに黒マント、さらに直太郎が飛び込んできて六本木を守ろうとするが、彼はタンジェリンを見て驚く。「姉さん?」
その隙に皆が六本木にナイフを突き出すが、ハラハラが身代わりとなって倒れる。

 

今のうちに!と黒マントが六本木と直太郎を押し出し、気がつくと二人は六本木の部屋にいた。

 

訪ねてきた朝霧は小説がずいぶん進んでいると喜ぶが、二人は唖然としたまま。

 

 

やがて六本木は、今もコミューンを守る浦川に電話するが、彼女は、お金が出来たら連絡をとだけ言って電話を切る。

 

 

夜、黒マントが現れる。
思い乱れている直太郎と六本木が話しているところへ、浦川、いやテンクチャーが現れる。

 

 

天使の家三周年記念の会、締め括りは、鈴木文華のイケニエの儀式。
しかし、殺す/殺せないと人々が迷う間に鈴木は逃げ出し、山中で魂になった。

 

 

六本木もタンジェリン/鈴木文華も思い出した。
文華は弟:直太郎に六本木を託し、倒れた。

 

 

六本木は、テンクチャーからナイフを受け取り・・・

 

黒マントの制止も聞かずに胸に突き刺した。

 

 

六本木の意識が戻るのを願う直太郎は、行方知れずの恩人カイに呼び掛けている。

 

黒マントの声が聞こえる。
六本木は見えない世界を旅している。でもきっと帰ってくる。君がここにいるんだから。

 

| | コメント (0)

追想と積木(ネタバレあり)

劇団水中ランナー 第十回公演

八幡山ワーサルシアター

12月14日夜観劇

作・演出:堀之内良太
楽曲提供:白濵賢吾

キャスト
将一:笈川健太
千秋:中嶋アキ
隆太:足立英
理紗:江田恵
椎名:高橋玄太
洋美:上田うた
朝倉:田中愛美
上村:天野なつ子
仁:小川啓太
尾沼:堀之内良太


とても良かった。
泣かされてしまった。


過去と現在、さらに劇中劇の演技と台詞が現実にも重なる多層構造。


最初は見えなかったものが、クロスオーバーしたり繰り返したりのシーンでは見えたり感じられたりする。


うわぁ、そう来るのか、と思った。
上手いなぁ、とも、むしろ、ズルいなぁ、とも思ったりした。

ジェンガのピースと記憶のなぞらえ方も、なるほどなぁと思った。

過去と言っても7年前。

30代前半くらいの人にとっては十分昔のことに感じられるだろうけれど、外見などはまだそんなには変わらない。学生から社会人になり、家庭を持ったりもして大きく変わっていることもあるが、絶対にやり直せないとも言い切れない微妙な歳月。


ただし、その7年前は、恋、友情、可能性、夢がキラキラしていた大学時代。
一種、別次元とも思える日々。


学生時代はリーダー的な存在で皆を引っ張り、励ましてきた人が、今は病気のお子さんを抱えて無力な自分に悩んでいたりする。

いまも叶わぬ作家の夢の瀬戸際に立っている人もいる。

当時の恋心を今も秘めている人もいる。

そこに、事故でその歳月分の記憶を無くした仲間が一人。
彼にとっては7年前が今。


仲間達の今の状況について、そこまでの経緯を知っていれば遠慮したことも、寝耳に水の彼は真っ直ぐに突っ込んでくる。


そして、久しぶりに会う仲間達。
それぞれに探り合いながらも、誰もがお互いを思いやり、良かれと思うことを言ったりしたりしてくる、今でも仲間な人達。


こうして、やり取りを思い返しているとまた涙が出そうになったりする・・・


こんな学生仲間を持てた人達は幸せだと思う。


まあ、思い返してみれば、自分のサークル仲間もあんな感じだったかも知れないと思うから、やはり20代頃の仲間は特別なのかも知れない。
(うちも同期で二組、サークル内で結婚して、そのうち一組に 今は元気だがなかなか大変な病気のお子さんもいたので、ちとぎょっとしたし身につまされた・・・)


役者さんに年齢はあまり関係ないと思っているけれど、等身大と言う言葉が似合う見た目と雰囲気の役者さん達が演じてらっしゃるので、尚更、迫ってきたような気がする。


このお話では、どちらかと言うと、現実と責任の重さを独りで背負いこもうとし過ぎて迷える男性陣、地に足をつけて踏ん張り、前を向こうとしている女性陣、と言う感じに見えたけれど、役者さん、皆様、それぞれに思い入れしてしまいそうになるキャラを体現されていて、素敵だった。


ぽこぽこクラブの玄太さんがご出演なので観に行ったのだが、玄太さんは、このサークル仲間のために書いた脚本をきっかけに本気で作家を目指し始めて、まだ芽が出ていない椎名さん。
学生当時は、サークルの中心的な将一さんの、冷静な参謀と言うところだったのかな。
今は、当時の彼女(洋美さん)とも別れていて、思うようにいかない現実の苦さを噛み締めている感じ。
皆の前では強がりもあるのだろうけれど、努めて冷静さを保つ姿、切なくて良かった。
サンタクロースのお話の中で、洋美さんの言葉を聞く表情にズキッとさせられた。


それから、劇団チョコレートケーキで、純粋な若者が様々な経験を経て変わっていく直前辺りまでを異なる舞台で二回観ていた足立さんもご出演で、内心、おおっと思った。
記憶喪失になった隆太さん。
彼だって、サークル仲間ではない彼女(理紗さん)が今はいて、それなりに変わってもいたのだろうけれど、記憶を失った今は真っ直ぐな大学生そのまま、危ういくらいで、記憶が突然戻って、直前の記憶と重なったらどうなるんだろう?と心配になるくらいだった。


それにしても、元々は入院している隆太さんのお母さんを励ますためにやることになったお芝居と言う劇中劇、名ばかりの演劇サークルにしては素敵過ぎる ・・・


以下、私の目から観たあらすじ。


事故で大学以降の記憶を失った隆太のために、名ばかりの演劇サークルの仲間達が久しぶりに集まる。
あまりにも以前通りの部室に皆、驚く。

隆太の記憶を戻すきっかけになれば、と集まったのだが、あの頃を思い出し、仲間達に会うことで、それぞれ自らを省みることになる。


サークルのリーダー的な存在だった将一は付き合っていたサークルのマドンナ千秋と結婚したが、子供が重い病気で悩んでいる。

作家志望の椎名は学生時代に付き合っていた洋美とは数年前に別れ、作家としてはいまだ芽が出ていない。

その洋美はジュエリーデザイナーとして進んでおり、隆太に紹介された男性ともうすぐ結婚する予定。

学生時代、隆太と両思いのはずなのに付き合うに至らなかった朝倉は今も隆太が好きだが、隆太には理紗という恋人がいる。
とは言え、今の隆太は理紗の記憶がなく、事実として認識しているだけ。気持ちは大学の頃に戻っている。


サークルをキャッキャと盛り上げていた上村と仁は結婚したが、仁がキャバクラに行って揉めたりもしている。

当時二留していた尾沼は、ずっとここにいる、と宣言していた通り、大学の警備員として大学にいる。部室の再現は尾沼の仕業。


部室にはジェンガがたくさんあり、尾沼は、よくジェンガのピースを記憶になぞらえ、抜き取ったピースを上に積み上げるのは正しいのか?元に戻すのが正しいのか?と言う話をしていた。


名ばかりの演劇サークルではあったが、一度だけ芝居をしたことがある。
隆太の入院していた母親を励ますために、椎名が書いた脚本で皆で演じた。
主演は隆太だったが、直前に母親の容態が急変したので、急遽、将一がやった。
プレゼントを配り終えたサンタクロースが、お礼を言うためにトナカイを探す話。
サンタがプレゼントを贈った皆が手伝う。サンタのプレゼントは、モノだけではなく、感謝を伝える機会、別れを告げる機会、告白の機会・・・
サンタクロースも、これまで一緒にたくさん運んでくれたトナカイにお礼を伝えて、これからは自分があちこちに連れていってあげたい、守りたいと思っている。


それぞれが過去と現在と向き合いながら、しばらく過ごしたが、隆太の記憶はまだ戻らない。
でも、戻らなくても、私が聞いた話を話してあげる、と言う理紗と一緒にいる。


最後にあのお芝居をもう一度観たい、と言う隆太の希望で、もう一度演じることになった。

サンタクロースの将一は、現れた千秋に、これから自分が必ず守る、と伝える。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

«四獣×玉造小劇店配給芝居『ワンダーガーデン』(ネタバレあり)